荒川区の「道の駅」を創る!ARAKAWA ii VILLAGE

店内

「女将」?


■西尾久にできたかわいいお店 ARAKAWA ii village。そこを切り盛りするのが女将さんの川合理江さんです。おしゃれな雑貨屋さんという雰囲気のお店には似つかわしくない肩書きに興味をそそられます。cafeでもあるARAKAWA ii VILLAGEの美味しいアイスコーヒーをいただきながら、店舗の隣のガレージ(ガレージもお店の一部)でお話を伺いました。

女将 川合理江さん
女将 川合理江さん

私の立ち位置なんですが、「ARAKAWA ii VILLAGE(アラカワイイヴィレッジ)」という下町の道の駅をテーマにした、小さな複合施設の女将という立場になるんです。主人が社長で裏方ををやってくれています。

単に「お店」って、立ち寄ってまたすぐに通り過ぎていく場所だというイメージがあるので、「ARAKAWA ii VILLAGE」は「村」という名前をつけたとおり、色んな人が【滞在】する場所になっていきたいなと思っていて。荒川区へ遊びに来た人にも、住んでいる人達にも楽しんでもらえて、地域の事業者さんの困りごとも解決できるプラットフォーム施設を目指しています。

旅館で言うところの支配人みたいな裏方をやってくれるのが社長で、私は「ARAKAWA ii VILLAGE」に関わる人たちのお世話役のような意味で、「女将」をやらせてもらっています。なので、今回のように人前に出てお話させてもらったりするのは私が担当、という形になります。

店先のドライフラワー
店先のドライフラワー

 

オンラインから実店舗へ


■ここをオープンしたのはいつですか?

昨年2019年の10月です。

それまでは自宅兼事務所で会社員をしながらオンラインショップをやっていました。そのオンラインショップも自分がすごーくやりたくて始めたんです。「あの人誕生日だなぁ」とか、「おばあちゃんにクリスマスプレゼント送りたいなぁ」と思った時に、自分が渡しに行けなくても、買いに行けなくても、オンラインショップだったら、相手のことを想像して、買い物をして、送り届けることができるじゃないですか。そこが素晴らしいところだなと思っていて。でも全然ノウハウもない中でやり始めて、ちょっとずつ形になってきたという感じです。

私は機械音痴なんですけれど、インターネット大好き人間なんです。
今回のコロナによる自粛期間でも、インターネットがあったからみんな孤独にならずに済んだと思うし、本当にインターネットありがとう!って思ってます。

■そこからここをリアルな店舗、複合施設という形にしようと思ったのはどのようないきさつですか?

複合施設として運営しようと思ったのは、自分たちのやりたい事と、もしかしてできるんじゃないかな…?と思うことがいくつもあった事。
もう一つは、ARAKAWA ii VILLAGEのあるこの場所は、私の親友の実家で「キリン鉛筆」という会社があった場所だったんです。

ここを始める前、私と主人とで自宅兼事務所でオンラインショップをやっていた頃に、いつかはリアルなお店も持ちたい、という話を親友にも話していたんです。
ふとしたときにその親友から「今は使っていないし、家族にとって思い入れのある場所だから、知らない人には貸すつもりは無いんだけど、もし使いたかったら言ってね」って言われたんです。

ちょうどオンラインショップがちょっとずつお店の体を成してきていたタイミングで、商品のダンボールの山の中で生活をしていて、ちっちゃな地震でもダンボールの下敷きになって死んじゃうけどどうしよう(笑)って言っていたときに友人がそう言ってくれたので、ご縁とタイミング、すべてがピタッと来てるんじゃないかっていうことで。

これは神様か仏様かわからないけど、何かが背中を押してくれてる。そう感じる事って人生でそう何回もあることじゃないから、ここを拠点にして頑張ってみようかってことになりました。

左から 川合理江さん、川合輝幸さん、淡路優子さん
左から 川合理江さん、川合輝幸さん、淡路優子さん

もう一人女性スタッフがいるんですけど、彼女も共同経営者で私が会社員だったときの同僚だったんです。彼女が会社を辞めるときに、私がこういうことをやりたいっていう話をしてて、「じゃぁ、ついていくわ」ってついて来てくれて(笑)。
でもお給料も出るかわかんないよって言ったんですけど、「私、川合さんのファンだからいいよ」って言ってくれて。じゃ、頑張って会社としてやっていこうって三人四脚でやっている状態です。

ガレージ
ガレージ

 





人と場所、そこから生まれる「もの」


ただ単に、自分たちの趣味に合うものを集めて、素敵なお店でしょ、おしゃれでしょ!っていうスタイルはちょっと私たちとは違うかなと思っていて。
この地域とか、場所に関わる人たちみんなにとって【嬉しい場所】になるには、“雑貨屋”とか“カフェ”とかという一つ一つじゃなくて、衣食住を総合的にお手伝いできることをやっていきたいなって。

限られた人生をどう使っていきたいかって思ったときに、この場所を使うことになって初めて、自分たちはいろんな人に”喜ばれる【場所】を創っていきたい”んだなと分かってきたんです。

荒川区はものづくりの町だし、元々ここが鉛筆工場だったっていうのもそうだし。鉛筆ってものづくりの原点と言えるアイテムだなって思っていて。
例えば音楽でも、譜面を書くときに最初からボールペンで書かないんじゃないかなと思うんですよね。

直す前提のものだから。譜面を書くにしても、設計図を書くにしても、何か物を作る人ってきっと鉛筆で描くんじゃないかなっていうのがあって。ものづくりの最初のラフスケッチの段階にはいつも、かたわらに鉛筆があるイメージがあります。

主人も私も以前からアパレル系の仕事をやっていて、ここにある商品を「もの」にしちゃったら「もの」のままで終わっちゃうんですけど、作り手の人生や思いを感じるストーリーを知ってもらう事で、「もの」に付加価値が加わった「こと」になる。そういう考え方がブランディングだと思っているんです。

荒川区や下町エリアの、すごくいいものを作っていらっしゃる事業者さんに、その思いをひっくるめて消費者に届けるようなブランドのコンセプト立てやパッケージデザイン等のお手伝いをしていきたいなと思っていて。
少しずつですが、いくつかの企業さんとお話させていただいています。

鉛筆をモチーフにしたロゴ
鉛筆をモチーフにしたロゴ

■西尾久のこの場所というのは、探してこの場所を見つけたというわけではないんですね。

はい、そうなんです。

大きな公園ができるから「すごい将来性のある場所を見つけましたね」なんて言われるんですけど、それより前に「もうここで腹くくってやろう!」、「じゃぁどういうことをやる?」っていう話をしている中で後から公園ができるらしいという話を聞いて「あっ、そうなんだ」って感じでした。

ここは「下町の道の駅」というテーマで運営しているので、たまたまですけど「良い立地だね」って言われる場所なら、荒川区をものづくりの街だと知らない若い世代の人たちが公園に遊びに来て、「雑貨屋がある」「カフェがある」どれかその人たちに引っかかることでお店に入ってもらって、カッコいいなって思ったものが「実は荒川区のブランドのものなんですよ」って言ったら、荒川区って思っていたよりすごい!って思ってもらえるんじゃないかって。

荒川区内で作られている照明器具やドライフラワー
荒川区内で作られている照明器具やドライフラワー

照明器具とか、86400″さんの表札とか,、ドライフラワーとか近所で作ってるんですよ~とお客様に言うと、すごくびっくりされて、荒川区凄いじゃん!ておっしゃってくださるお客様も結構多いので、やっぱりそれが知られていないってもったいないし。逆に言うとものすごい伸びしろもあるし。

私達がここにきてまだ1年足らずでそういう素敵なものにいっぱい出会えているので、ずっとこの先も探し続けたり、事業者さんたちが持っているアイディアを形にしていくのをお手伝いさせてもらえれば、かなりすごいものがいっぱいできるんじゃないかなっていう可能性を感じてます。

私たちも色んな事が、色んな人のサポートで始めることができたと事が、今度は逆に人の役に立つことをしろよって神様か仏様に言われてる感がすごくあるので、本当にみんなのためになることをしなきゃっていう責任感も同時に感じます。

 

未来


■ここの公園ができて、近くには学校も図書館もあるし、来年の秋にはあらかわ遊園もリニューアルオープンするということなので楽しみな場所になりますね。

宮前公園は荒川区の管理ということなので、地域の背景をわかっている人たちに、何か公園を使って新しいことをしませんかって持ちかけると話がスムーズに行くんじゃないかという期待を持ってます。

たまたまここをお借りすることになって、何か面白いことをやっていきたいなと思っていたけど、場所的に孤独な戦いになるんじゃないかなと思いきや、「あらあむ座談会」という地域の人たちと繋がるオンラインイベントに声をかけてもらったりとか、近所にめちゃくちゃ面白い人たちいるじゃんって。

旧小台通りでは、東京 R 不動産が仕掛けてる「ニューニュータウン西尾久」も同じようなタイミングで始まっていたり、同時多発的にいろんな人が集まってきている感じがこの街にあるので、そこもなんか不思議だなって思ってます。

銀座や新宿、表参道にわーっとみんなそっちに行ってたのが、ほんとにそれが自分にとって価値があるのかなとみんなちょっと疑問符がついていたところに、今回のコロナで決定的になったと思うんですよね。

外出自粛して近所にお散歩しかできなかった人たちが、「この辺すごい面白いなって気づいた」とおっしゃられるお客様が多くて。きっとこの西尾久だけじゃなくてどこの地域でも一緒だと思うんですよ。平日は都心に働きに行って、休日には都心や別の郊外の場所にお買い物や遊びに行ったりする。

この街に住んでいるのにこの街を知らない人たちが、初めて地元を深く知って、面白いと気づけた事で、つらかった外出自粛期間を価値のあるものにした人たちもきっとたくさんいるんじゃないかなって思ってます。

■5年後、10年後の未来予想図的なものは何かイメージされていますか?

願望はあります。

今は隣のお店とここのガレージが ARAKAWA ii VILLAGE なんですけれど、このガレージのとなりの駐車場とその向こうに空き地があるんです。勝手に思ってるだけなんですけど、頑張っていつかその場所も借りたいなと思ってます。

自分たちで全部やろうというより複合施設と言う名前の通り、テナントと言うとドライな言い方になっちゃうんですけれど、ARAKAWA ii VILLAGE を 1 つの村みたいに、互助的な役割を持ってみんなで盛り上げていこうって共鳴してくれる事業者さんと、一緒にこの場所を【下町の道の駅】としてARAKAWA ii VILLAGEを成長させていきたいなと思っています。

外観

あとは、どこの地域でもそうですが、この辺も空き家問題が結構深刻ですね。皆さん手放さない理由はそれぞれですが、思い入れがある方がやっぱり多くて。でも維持管理は本当に大変。

そこを、お店なりオフィスにして、活用してくれる若い世代がいるんなら、託してみようかなと思ってくれる人も一定数いると思うんです。

ARAKAWA ii VILLAGE 内に限らず、近隣に商店街でも村でも、一緒にこの街を良くしていきたいと思ってくれる人たちが集まって、コミュニティを作っていきたいなと思ってます。

■最後に締めの一言をお願いします(笑)

締めになるか分からないんですけど、やっとお店が形になり始めたタイミングで緊急事態宣言になり、 1 ヶ月以上お店を閉める事になって気持ちが落ち込んだりもしたんですけど、お客さんのほうが私を励ましてくれるんですよ。

久しぶりにお店を開けたときにパーッと駆け込むように来て、「すごい楽しみに待ってたんだよ」って言ってくれたり、たまに通りかかるおじいちゃんに「大丈夫かぁ、ちゃんとやってるかぁ」なんて言われたり、お客さんの暖かい言葉が本当に私たちのエネルギーの元になってるなって、幸せな仕事してるなってつくづく感じて、本当にありがたいです。


<店舗情報>

    • 店名:ARAKAWA ii VILLAGE
    • 住所:〒116-0011 東京都荒川区西尾久3丁目5-5キリン鉛筆ビル1階
    • 電話番号:03-6807-8195
    • 営業時間:
      月、火:11:00~17:00
      木〜日:11:00〜18:30
    • 定休日:水曜日
    • 合同会社 川合企画:https://www.kawaikikaku.net/

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