編集長から「エキゾチックワインズとブラックホールコーヒーが共同開発したワインのように楽しめるコーヒーがすごくいいと思うので、どなたか取材いかがですか?」とグループLINEに投稿があり、すぐに「私行きたいです!」と手を上げました。
コーヒーが好きで最近はコーヒーを美味しく飲みたいと思い、コーヒーの淹れ方を猛練習中な私。
どんなコーヒーが出来上がっているのか興味深々。
エキゾチックワインズの店主梁 世柱さんは、世界最高のソムリエ50人に選ばれたお方。
ブラックホールコーヒーの店主前田さんは、南千住のスペシャルティ・コーヒーの名店、カフェ・バッハで修行をされたお方。
このお二方がどのような縁で、どうしてワインのように楽しめるコーヒーを作ったのか、お話をお伺いしてきました。
-作るきっかけはなんだったんですか?
梁さん)以前からブラックホールコーヒーさんの存在は知ってたんですよ。知ったきっかけは2年くらい前に、今休業中のカド珈琲で飲んだコーヒー。そのコーヒーがあまりにもおいしくて、カド珈琲の店主に尋ねると、ブラックホールコーヒーさんのコーヒーだと知りました。いつかなんか面白いプロジェクトが、一緒にできたらいいなぁ~。と思っていたらコロナになってしまって新しいことをすることがタイミングが、なかなか作れなくなってしまったんです。でもふと、いや行ってみよう!と思い立ってブラックホールコーヒーに押しかけました。ただ普通にお客さんとして。連絡も無しで行きました(笑)。話をしてたらすぐに意気投合して、それからチョースピードでことが進んで行きました。
前田さん)びっくりしましたたけど、私も梁さんのことはカド珈琲さんから聞いていて。「ワインのすごい人がいるから一緒に何かしたらいいよ」と言われていたんですよ。同じ様にコロナでなかなかお店に入りにくいし、タイミングが合わなくて、そしたら梁さんが来てくださって。
-ワインのように楽しめるコーヒーというコンセプトはどうして?
梁さん)このコンセプト(ワインのように楽しめるコーヒー)自体は、実は5年以上前から抱えていてたんですよ。でも、最初に前田さんと話した時は、それをするつもりはなかったんです。古き良き喫茶店の味みたいな、そんなイメージで何かをやりたいですよねって話してまして。でもふと思い直して、もしかしたら「ワインのように楽しめるコーヒー」ができるんじゃないかなって思って、前田さんに相談したら、やりましょうっていうことになりました。このコンセプトの発端は、僕がソムリエとして現場で働いていた時に感じたことなんです。食事とワインでサービスをした後、最後のコーヒーや紅茶の時間で、どうしても流れが途切れてしまう。お客さんがものすごくコーヒーに詳しくて、ソムリエも同じように詳しかったら話は途切れないのですが、なかなかそうもいかない。逆にソムリエだけが詳しくても、お客さんがついてこれない。この問題は、ワインが好きで食べに来てる人たちが、そのままのモードで楽しめるものがあれば、解決するんじゃないか?とずっと思っていたんですよ。紅茶であれコーヒーであれ、ワインとイメージが結びつけられるものであれば、なんでも良かったんです。例えば、「あ、何かこれ、あのワインぽい味してるよね。」みたいに、コーヒーに詳しくなくても、ワイン好きとしてそのまま美味しく楽しめるのではないかと妄想していました。
-その話を聞いた前田さんどう思いました?
前田)最初、「ワイン好きが飲むコーヒー」ということから、私がワインに詳しくないのもあって、私の中では「ワインみたいな味のコーヒーがありますよ。」という話をしました。そうしたら、「いやそうじゃない。ワインみたいなって言っても、漠然とし過ぎていて、どのワインのことなんですかね、ということになってしまう。」って話しになったんですよ。なるほど、一口にワインといってもいろんな種類があり、味も香りもそれぞれ違う。それはコーヒーも同じで、一口にコーヒーと言っても豆や焙煎が変われば、全く違うものになるわけです。普通に(ワインっぽい)コーヒーを出してお終いと簡単に思ってましたが、ワインを理解したうえで作っていくという話になって、面白そうだなって思いました。
-それから試行錯誤が始まったんですね。
梁さん)最初は、前田さんがワインの事をある程度知るということ。そして私がコーヒーの事を知るという事を、先にする必要があると思いました。というのも味わいや香りの表現で、ワインとコーヒーでは一致してない部分があるんですよ。例えば「甘い」という表現があるとすると、ワインにとって「甘い」という言葉が意味するものと、コーヒーにとっての「甘い」が違うんですよね。まずはこの違いを、お互いが理解しないといけないと思いました。そうしないと、二人とも同じ日本語を話しているはずなのに、実は通じ合っていない、みたいなことになる。ワインの甘味は、果実味がベースなので、基本的には残糖分が甘味に繋がります。でも、コーヒーには糖分がないので、コーヒーにおける甘みとは何を意味するのか、未知の世界でした。
前田さん)コーヒーの甘味はいろいろありますが、香りから想起されるものが代表的なものです。コーヒーはフルーツみたいな香りがありますよね、ストロベリーとかグレープフルーツとかの香り。その香りと、フルーツを食べた時に感じる甘さのイメージを紐づけていくんです。あとは、酸味と苦みのバランスによって、あとから甘さが追ってくる感じとか、後ろに隠れている甘さもあったりします。
甘みという言葉が、全然違う似たようでいて全然違う意味を持っているというのがわかりました。
梁さん)似ているようで全然違う意味をもっているので、ココを調整しないとピントが合わない。なので、お互いに「教える」ことからスタートしました。
-FBに書かれていた、ペアリングの法則とは何ですか?
梁さん)ワインには渋みはあるけど、苦みはあまりない。料理には苦みはあるけど、渋みはあんまりないんです。そして、ワインペアリングをする時には、ワインの渋みと料理の苦みは同じものと考えます。互換の関係にあるといえばいいですかね。苦みはあるけど渋みが少ないコーヒーを対象にした時も、同じように考えることにしました。(今回モデリングした)ピノ・ノワールという葡萄品種は、渋みのレベルを5段階で表すと、2くらいになるんですね。一方で、ピノ・ノワールの酸味レベルは4くらい。その2:4という構造をコーヒーで表現したんです。ペアリングの法則を用いて、ワインの渋みとコーヒーの苦みを同じものとして考えたという事なんですよ。
-コーヒーにもいろんな種類がありますがこの豆を選んだ理由は?
前田さん)まず、うちで扱っている豆のコーヒーを梁さんに飲んでもらいました。豆だけではなく、焙煎違いのコーヒーをいっぱい飲んでもらって、一番イメージに近いモノというので決めました。エチオピアのナチュラルという精製法の豆で、ふくよかな果実っぽい、ストロベリー系の風味で、少し発酵した風味がする豆なので、今回のイメージに一番近かったという感じですね。
梁さん)それを決めた時は、実際にワインを飲みながら、酸味がこれくらいで渋みはこれくらい、なんて話をしながら決めていきました。ワインの果実味(甘味)が酸とのバランスで成り立っているという考え方で、コーヒーの苦みと酸味のバランスをとった結果として、甘みが狙ったポイントにくるようにと。ワインを飲みながら試していった結果として、エチオピアの豆がいいんじゃないかとなりました。
-ワインは初めから決めていたんですか?
梁さん)ワインはピノ・ノワールと最初に決めていました。ほかにもいつかやりたいと思っているのはあるのですが、一番最初に作るのであれば、多くの人が当たり前に飲んでいるコーヒーから一番イメージが遠いものになるのが、ピノ・ノワールではないかなって思ったんですよ。
近いものを選ぶと、多分わかりにくいですよ。コンセプト商品なので、ある程度のわかりやすさが欲しかったというのが、最初にピノ・ノワールを作った理由です。
コーヒーは苦みが強くて、酸味が強くない。多くの人がそう思っているはずなので、ピノ・ノワールは全く逆方向に行くので面白いと思いました。
-前田さんはこのワインと合わせるのはどうでしたか?
前田さん)ワインが抜群にうまかった(笑)。コーヒーは酸を強調すると苦みが減ります。苦みを強調すると酸が減ります。その二つの要素は連動しているので、絶妙なバランスを探りながら、どうピノ・ノワールを表現しようかと悩みました。
-難しかった事は
梁さん)ワインを飲みながら豆を決めたその次のミーティングの時に、焙煎違いを試してみました。どれくらいの焙煎度を狙うか?試飲の時の焙煎の塩梅は、イメージしているピノの味わいの構造からちょっとずれていた。より近づけるためには、非常に微妙な、小さい範囲のところを狙う必要があと感じました。
前田さん)わたしもピンと来ないなっていうのは感じていました。焙煎時間が10数秒違うだけの豆を複数用意して試飲してもらって、これだと苦みが足りない、これだと酸味が足りない、と。グラデーションで焙煎違いの豆を用意したけれど、ここに答えがないのではないか?という不安がありました。(苦笑)コンセプト商品なのでコーヒーとして美味しいだけではだめなので、困ったなって思っていました。
梁さん)悩んだのはブレンドですね。
前田さん)グラデーションで答えがなかったので、混ぜようという話になったんですね。これは私にとって逆転の発想だったんです。コーヒーのブレンドは、別の豆同士を混ぜるのが普通なんです。例えば、ケニア、インドネシア、メキシコなど別の産地の豆を、同じ焙煎度で混ぜるのが普通のブレンドなんです。でも、今回は焙煎違いを混ぜました。焙煎違いの豆を混ぜるっていうのは、コーヒーの世界ではあまり良い事ではないと考えられています。なんか全然とっ散らかった味になるんですよ。ただ今回は、たまたま焙煎をグラデーションで作っていたので、わずかな焙煎違いを混ぜてみたら、やっと近いものが出来上がった。コーヒー専門の私から言わせると、すごく特殊な事をやった感じです。
梁さん)でも、コーヒーの世界では特殊でも、ワインの世界では普通なんですよ。とくにピノ・ノワールはその畑の位置によって、ぶどうの味が大きく変わるんですね。そして、畑をブロックごとに区切って、少しずつ味が違う葡萄(ワイン)を混ぜたりします。混ぜることによって、味わいに奥行きが出て、レイヤーが生まれる。とても一般的な、ピノ・ノワールの作り方です。コーヒー目線からすると非常識でも、ワイン目線だと腑に落ちるんです。
お二人が試行錯誤して出来上がったコーヒーを試飲させていただきました。
今まで飲んだことがないような味わいでした。軽~い感じがしてあーこれが酸味か、確かにフルーティーな感じもするなぁ~て思いました。そして、間違いなく美味しい(笑)
焙煎は湿度、豆の状態で変わってくるのでぶれちゃうのでとても神経を使いプレッシャーを感じているそうです。だから大量生産ができないそう。
コンセプトも大事だけれども、コーヒーとして美味しくないとダメとお二人が言っていた通り美味しいコーヒーに出来上がっています。
このコーヒーはxotic winesさんか、ブラックホールコーヒーさんで販売されています。
早速xotic winesさんに伺ってコーヒーを買ってきました。
ワインがたくさんある中にコーヒー棚が設置されていました。
実際に家に帰って自分で入れてみました。
家で飲んでるいつものコーヒーと色がこんなにも違います。どっちかわかりますか?右側の薄い方がそのコーヒーです。
前田さんにコーヒーを入れるお湯の温度は83度とお伺いしたのでその通り温度計で測って淹れました。
主人に飲んでもらいました。
美味しいよ
と「美味しい」しか言っておりませんでしたが、美味しいというのが一番なのかもしれません。
前田さんのしてやったりとした顔が思い浮かびました。(笑)
梁さんが「すごい素敵だなって思うのは、この画期的なコーヒーだと思う。このコーヒーが荒川区の町屋と言う下町で完結する形でつくられたというのがいいですよね。下町の中でローカルプロジェクトとしてこれだけのものを作れたのはすごいと思います。」おっしゃってました。確かに、こんなにすごいコーヒーが荒川区から発売されているのは、すごい事だと思いました。
試したい方は是非、オンラインショップかお店で購入してみてください。
オンライン販売はこちらから Café Xotica
<店舗情報>
- 社名:ブラックホールコーヒー合同会社
- 住所:東京都荒川区町屋4-31-11
- 営業時間:火・水・金:12:00 ~ 19:00、土・日:14:00 ~ 19:00
- 定休日:月・木
- 電話番号:03-6807-9767
- Instagram:@blackhole_coffee_roaster
- Facebook:https://www.facebook.com/blackholecoffee/
<店舗情報>
- 店名:xotic wines
- 住所:東京都荒川区町屋1丁目2番7号ヴェルデセゾン2階
- 電話番号:03-6240-8880
- 営業時間: 水曜〜金曜:17時〜20時
土曜・日曜:12時〜20時 - 定休日:月曜・火曜・祝日定休
- Instagram:@xoticwines