再始動する千代の湯。若いオーナーが挑むのは銭湯の新しい生きる道!

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西尾久の銭湯「千代の湯」は、尾久西小学校の裏手、スーパーバリュー付近のマンションの1階にある銭湯です。

といっても、表通りから見えるのは看板だけ。
奥まったアプローチの先にあるため、地元の人でもいまいち場所がピンとこない人ももしかしたらいるかもしれません。

この春、この千代の湯の経営が若い経営者に引き継がれました。
引き継いだのは、千代の湯から歩いて5分程の距離にある梅の湯のオーナーである栗田さん。

2021年 大きな課題 ができました(栗田さんブログより)

銭湯の火が街かどから少しずつ消えていっている現代に、2軒目の銭湯の運営に挑戦します。

(*本記事の最後に銭湯に関する読者アンケートがあります。是非ご協力お願いいたします。)

 

4月から本格的な営業を開始。
できていなかったことを積み重ねるところからのスタート。


栗田さんが千代の湯と関わり始めたのは2020年の夏頃。

「もともとここを運営されていたご夫婦がいらっしゃったんですけど旦那さんの具合が悪くなられて外に出られるのも難しいような状況になられていたんですよね。梅の湯が近いのもあって銭湯組合の手紙を渡しに行ったりしていました。」

当時週4日しか営業していなかった千代の湯。年齢的にも運営は大変ですよね、というような会話が自然と行われました。

「手伝ってくれる人はいないんですか?とか聞いてたんですけど、身内ではなかなか難しいと。でも実は梅の湯でもバイトを募集していますし、銭湯の運営を手伝いたいと思っている人が外にいるのは分かってたんですよね。だったら、そういう人たちを梅の湯以外のお店でも雇ってもらえるような形にできないかなあ、と思って。まずはそのイメージをお伝えできればということで自分で掃除の手伝いとかを始めました。」

まずは掃除の手伝いから

とはいえ梅の湯の運営をする栗田さんが自らずっと手伝い続けることもできないため、代わりにと銭湯好きの長谷川さんに声をかけ、掃除を手伝ってもらうことに。そうこうしているうちにご夫婦での運営がいよいよ厳しくなりだしたので、掃除だけでなくもう少し踏み込んで考え出したそうです。

長谷川さん

「本格的に考え始めたのは今年に入ってからです。実は千代の湯が結んでいた不動産のオーナーさんとの賃貸契約がちょうど5月までだったんですね。その話しを聞いて「だったらやるか!」と決めました。」

4月から千代の湯の経営を継承し、本格的な営業を開始。
既に変化を実感しているそうです。

「やっぱり、今まで週4日しか開けていなかったのが毎日営業をしはじめた(木曜定休)、というだけでも全然違いますね。動ける人たちが変わったことはお客さんも感じていただいていると思います。お掃除もそうですし、脱衣所も少しずつ変わっていったり。」

脱衣所。古さはありますが清潔に掃除されていました。

自分自身が手伝っていた当時に感じていた「できていなかったこと」を当たり前のようにする。
それを積み重ねることで運営していけるという自信が湧いていると言います。

「このエリアは若いファミリー層も含めてあらゆる世代がいて土地の強さはあるので、それを活かしていけば何とかなると感じています。」

脱衣所にはお客様ノートが置かれていました。
また、手書き文字がびっしりと書かれた千代の湯新聞も発行されています。
見た目は以前と変わらない千代の湯ですが、来店客の声に耳を傾け、発信していこうという若いチームの新たな試みが早速始まっていました。

千代の湯新聞

オススメの銭湯は「家から一番近いところ」。
銭湯ライフを満喫したければ好きな銭湯の近くに住むべし!


ところで栗田さんが経営する梅の湯は千代の湯から歩いて5分ほどと目と鼻の先。
営業的に客層はかぶるような気がしますが、そうでもないのだそうです。

すぐ近くにある梅の湯

「銭湯の設置間隔は法律で決まっていて、この距離感が絶妙なんです。週に2-3回なら少し遠い銭湯にも行けるけど、毎日行くとなると意外と続かないんですよね。そうなると家のお風呂を使い始めたりしてしまいます。その辺りは肌感で分かっています。商圏的にはかぶっているんですけど、モロかぶりはしないという。」

毎日梅の湯で店番している栗田さん。
以前から千代の湯がおやすみの日に梅の湯に来るお客さんも分かっていたそうです。

「毎日営業するようになると、やっぱりその方たちは千代の湯に来ているんです。たまに気分変えよっかな、という感じで梅の湯に来てくれることももちろんあるんですけどね。意外とそういうものなんです。」

裏手にすっと立つ煙突

栗田さんは日頃から、オススメの銭湯を聞かれれば「家から一番近いところ」と答えるのだとか。

「たまに入るなら別ですけど日常使いであれば家から一番近いお風呂屋さんがベストなんです。で、そこがいいお風呂やさんだったら最高ですね!って答えてます。逆に、そういう生活をしたいなら、まずは銭湯から選んだほうがいいんです。ここを自分の銭湯にしたい!という銭湯を選んで、その近くで住む場所を選ぶのがオススメです。銭湯には”この銭湯に行きたいからこの地域に住みたい”と思わせる力があると僕は思ってます。」

行きたい銭湯の近くに住む

後継者がいない。リニューアルができない。
それでも営業を続けるしか道はない。


千代の湯は引き継いだままの状態で、一切工事などをしていません。
梅の湯では大規模なリニューアルを行った栗田さんですが、千代の湯には別の道を見つけようとしています。

「銭湯の存続にはリニューアルか廃業か、そのどちらかだと言われ続けています。梅の湯みたいにリニューアルして存続させるという道もあり、担える後継者がいればそうすればいい。でも、そうじゃないお店はどうしたらやっていけるんだろう、ということはずっと思っていました。」

銭湯のリニューアルには大きな投資がかかり、それを担うには覚悟が必要です。
しかし、客数が減少していくのを目の当たりにしている大半の銭湯においてそのような負担を担う後継者を見つけることは難しいのが現実。
でも、ハードにそんなにお金を掛けなくても、ソフトを改善するだけでも何とかなるんじゃないか。
人も、銭湯の運営に携わってみたいという人たちにうまく入ってもらう道筋が付けられれば、何とかなるんじゃないか。

お客様ノートの声にはしっかり目を通します

栗田さんがチャレンジしようとしているのは、そんな、新しい銭湯の生きる道を見つけることです。

「場所によって考えるべきことも違うし、正解は無いです。とはいえ、掃除はちゃんとやりましょうとか、普遍的なものもあります。まずはそこから始めて、その上で場所特有の施策とかをみんなで考えてやっていけば何とかなるんじゃないかなって。」

都内では銭湯の廃業が続き、お隣文京区も営業中の銭湯がかなり減ってしまいました。

「かなり手厚い行政の補助があったのに減っていきました。銭湯を継ぐ人がいないなら休業しておけばいいと思うかもしれませんが、都内の場合、次どうします?、という話しがすぐに来るんです。辞めます、となった瞬間に電話ががんがんかかってくるし、辞めていなくても電話が来ます(笑)。」

一度変わってしまうともう取り返しは効きません。
だから、銭湯を残すには営業を続けるしか無い。
担い手がいないなら、連れてきて運営してもらえる道を作るしかない。

「やりたいという人はいるんだからやってもらう道を作ればいい。実際にやってみてもらって、大変な部分も含めてわかってもらって、その上でやれる人を見つけてくるしかないです。」

千代の湯チーム

誰かが背負って示すべき道。
千代の湯にはその価値があるって思ってます。


千代の湯のアピールポイントを尋ねると、栗田さんは「、、、むずかしいですね」とニコリ。

「でもそういう銭湯がほとんどなんじゃないかな、って思ってるんです僕は。それでも地域に存在している。だから、特徴がないならそれを今から作りにいこうって。その武器が見つかったときはもう一歩進めるなって。」

それが何なのか僕もわからない。だけど、何かできそうだ。梅の湯にもできない何か。
何かやれそうだとは思ってる。だけどホントのところはやってみないとわからない。
そう語る栗田さんには悲壮感は全くなく、見えない未来にワクワクしているように見えます。

「変な話し、これでももしダメだったら、銭湯というもの自体がそういう存在になってしまったということになるのかなと。そんなふうに思ってます。時代にあった銭湯の数とか、商圏の広さとか。
何が正解かは誰もまだ分かっていない。だから自分でやってみて、僕だけそれを先に知っておこうかなって思ってます(笑)。」

千代の湯の運営はまだ始まったばかり。経営的にはまだ赤字ですが目標は明確です。

「千代の湯は場所も悪くないし設備もしっかりしています。これまで出来ていなかったことが多かったので、それらをやるだけでも伸ばせます。目標とする客数さえクリアすれば次のステップにいける。それを早く達成していかないと、と思ってます。それまではひたすら赤字ですが、最初に誰かがそれを背負って道を示す必要がある。千代の湯にはそれを背負う価値があるかなって思ってます。」

こちらは「トゴールの湯」

中から変わっていこうとしている千代の湯。
ここから全国の銭湯に向けた、新しい生きる道すじが示されるのかもしれません。
ぜひその変化を感じに行ってみてください。

千代の湯・銭湯の利用に関するアンケート


<店舗情報>

  • 店名:千代の湯
  • 住所:東京都荒川区西尾久5−22−14
  • 電話:03-3893-5439
  • 営業時間:15:00-23:00
  • 定休日:木曜定休
  • Twitter: https://twitter.com/chiyonoyu1010


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