荒川区の人たちがつくり上げた、食品ロス削減をめざす絵本
食品ロス削減をめざすため、荒川区が絵本『あらペンのおねがい』を制作しました。子どもたちに「もったいない」の心を育むことができるようにと、荒川区の清掃リサイクル推進課が主導し、区立保育園の保育士さんたちと、荒川区在住の画家・絵本作家の松田奈那子さんが一緒につくり上げた作品です。
松田さんはアニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」で、劇中の絵本制作を担当。2022年2月には東尾久のOGU MAGで劇中画の原画展「松田奈那子『ジョゼが描いた世界』展」が開催されたことで話題になりました。
5月中旬から区内の図書館で読むことができるようになった絵本『あらペンのおねがい』。その内容や、作者の松田奈那子さんに伺ったお話を紹介します。
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絵本『あらぺんのおねがい』の内容は
のんちゃんが毎晩寝る前にするのは、ペンギンのぬいぐるみ「あらペン」にその日あったことを話すこと。
ある日、給食をたくさん残してしまったことを告げると、あらペンは「見せたいものがある」とのんちゃんを外に連れ出しました。
初めて見る世界に、胸を高鳴らせるのんちゃん。しかし……
あらペンが見せてくれた世界のいたるところで、干ばつや気温の上昇に苦しむ生き物たちを目にします。
ごみを運ぶとき、燃やすときに出る二酸化炭素がその原因。あらペンはのんちゃんに「地球を助けて」「みんなが残すたくさんの食べ物がごみになっている」と訴えます。
のんちゃんはあらペンとの会話で、同級生たちも給食を残していたことを振り返ります。たくさん残った食べ物を見て、給食の先生が悲しそうな顔をしていたことに、のんちゃんは気づいていました。
1人だけが残す量は少なく見えても、みんなが協力すればごみになる量をうんと減らせることに気づいたのんちゃん。ここからどんな行動に出るのでしょうか?
続きが気になる方は、区内の図書館での閲覧のほか、保育士さんによる『あらペンのおねがい』朗読動画をご覧ください。
世界と自分はつながっている……制作チームの思い
絵本の出版に先立って、制作に関わった松田さん、区立保育園の保育士さん、荒川区清掃リサイクル推進課の職員さんによる制作チームの振り返りが実施されました。
2021年6月から『あらペンのおねがい』のために集まった制作チームが絵本に込めた思い。それは、自分とは遠いところで起きているように思える問題が、実は身近な問題であるということ。世界と自分はつながっていることを感じてもらえる絵本にしたかったそうです。
この場でのお話をもとに、松田さんに急遽インタビューを実施。制作の背景を伺いました。
−− 当初、ストーリーに2つの案があったことを伺いました。それぞれどのような案だったのでしょうか。
(松田奈那子さん 以下同じ)1つは絵本の形になったファンタジー性のつよいもの。もう1つは保育園での日常風景を元に描いた、種から野菜を育てて食べるお話でした。
「絵本ならではの世界観で伝えたい!」と、こちらの案が選ばれました。
−− 保育士の皆さんから「荒川区の保育をそのまま絵本にしていただいた」との声が聞かれました。 保育園での様子、工夫について保育士さんにヒアリングされたと伺っています。
保育士さんたちには実際の園での食事の様子や、子どもたちが苦手な食べ物、その理由、どういった対応をされているかなど、たくさんのご意見を伺いました。
どの園でも、子どもたちが「食べる」ことを楽しめるようさまざまな工夫をされています。どのエピソードもあたたかく、日々悩みながら、いかに真剣に園児の皆さんひとりひとりの成長と向き合っておられるかが伝わってきました。
−− それらを絵で表現する際、気を配った点を教えてください。
園での食事風景により近づけたいと思ったので、保育士さんたちに給食とおやつの写真や献立表をいただきました。給食の先生の服装や、給食を運ぶワゴンの写真などさまざまな資料もお借りしています。
特に終盤の食事の場面では「おいしそうに見えるように、楽しい雰囲気が伝わるように」と意識しながら描きました。
−− 松田さんのこれまでの作品からは、ご自身の体験を反映したものが多くみられるという印象を受けています。 今回の作品のテーマである「食品ロス」について、制作期間のうちでご自身の生活習慣や行動に変化はありましたか?
「食品ロス」だけでなく、ここ数年特に「SDGs」という言葉を多く見聞きする機会が増えましたし、自分にできることから少しづつ気をつけようと心掛けてはいました。
ただ、今回の絵本制作に携わったことで荒川区が実際に行っている「食品ロス削減」に関する取り組みについては初めて知ることが多かったです。「荒川もったいない大作戦」に私も参加したいと思いました。
参考サイト:荒川区webサイト「荒川もったいない大作戦とは」
−− 「あらペンのおねがい」には都電荒川線、あらかわ遊園など、区民にゆかりのある風景が描写されています。これまでの松田さんの作品では自然の輝き、力強さが印象的でした。 荒川区という街を描くときに工夫したこと、見てほしいところがあれば教えてください。
荒川区は下町感あふれる商店街も魅力的ですし、心地よい広々とした公園など、描きたいところはまだまだ他にもたくさんありました。
今回荒川区の街の風景が出てくる場面は少しだけですが、ぎゅぎゅっと思いを込めて描いたので、街全体の親しみやすいあたたかな雰囲気を感じてもらえたらうれしいです。
◇ ◇ ◇
食品ロス問題を通じて、子どもたちに「世界と自分はつながっている」と気づくきっかけを模索し続けた絵本『あらぺんのおねがい』。荒川区内の図書館で手にとって、お子さんと一緒に「食べる」ことについて考えてみてください。
<書籍情報>
- 作品名:あらペンのおねがい
- 文・絵:松田奈那子
- 発行:荒川区環境清掃部清掃リサイクル推進課
- 協力:荒川区立保育園保育士有志、荒川区立尾久図書館
- 関連情報:荒川区webサイト「荒川もったいない大作戦」