地域猫との付き合い方 – [こち荒] vol.5

「こちら荒川遊園地前が事務所」、略して「こち荒」。

 

荒川区と言って、思いつくのは?都電、あらかわ遊園、バラ、下町…いろいろあると思います。猫を挙げた方もいらっしゃるのでは?

前回、「あらかわ遊園地までの道」と題して遊園地までの道のりをご紹介したのですが、あらかわ遊園エリアには野良猫、いわゆる”地域猫”がたくさんいます。

 

以前から、同じ町会で猫を保護する活動をされている方の存在は知っていたのですが、 いろいろ話を伺っていると奥が深そうなので、今回改めて取材させていただきました。 (会話では敬称略)

今回、お話を伺ったのは、地域猫を捕獲、避妊・去勢活動を行っているボランティア団体「ラブ・キャッツ」の駒野弘子(こまのひろこ)さんと荒川地域猫連絡会、会長の田中泰夫(たなかやすお)さんです。

「ラブ・キャッツ」駒野さん、田中さん
右から「ラブ・キャッツ」の駒野弘子さん、荒川地域猫連絡会、会長の田中泰夫さん


-地域猫という呼び方をされていますが。

(駒野)「野良猫」という呼び方はあまり良い印象ではないし、横浜で「地域猫」と呼び、地域の中で共存していこうという運動があってから、「地域猫」という呼び方が広まってきました。また家で飼う「内猫」に対して、「外猫」と言ったりもします。


-駒野さんの活動について教えて下さい。

(駒野)三十年以上、個人で地域猫の捕獲、避妊・去勢を行ってきました。しかし、1回の避妊手術に3万円程度かかるなど非常に負担が大きく、2008年、荒川区が避妊・去勢の助成金を設け、登録団体を募集したのをきっかけに「ラブ・キャッツ」という団体を作りました。現在、荒川区に60団体ほど登録団体があり、「ラブ・キャッツ」は、その中でも1,2番目に大きなエリア、西尾久7、8丁目と4、5、6丁目の一部で活動しています。住民が区に通報してきた情報から、登録しているエリアの団体に依頼が来るのですが、実際は登録エリアが網羅されていないため、エリア外の案件にも対応しています。


-どうやって捕まえるんですか?

(駒野)捕獲するのは捕獲器を使用します。大きなカゴの中にエサを置き、中の踏み板を踏むと戸が閉まるというもの。区も貸し出しを行っていますが、使い勝手が悪いので、自分達で購入したものを使用しています。また、捕獲した猫の多くは病気にかかっている事が多く、まず捕獲したら、丸1日獣医に預けて検査。ノミや皮膚病、猫の感染症。中には骨折や失明している猫もいて、それらの入院・治療は自費なので非常に負担が大きいです。

病気やケガ、里親の見つからない子猫は自宅で飼っているとのことで、その数、30数匹(!)。エサ代も1匹飼う家の一月分が1日で消えてしまうので大変そうです。

駒野さんの自宅で飼う猫達。8帖ほどの部屋にケージがぎっしり並んでいる。
駒野さんの自宅で飼う猫達。8帖ほどの部屋にケージがぎっしり並んでいる。

今まで捕獲した猫の助成金申請書を見せて下さいました。年によってばらつきがありますが、かなりの厚さです。多い年には60匹以上も避妊・去勢を行っています。申請書には、捕獲した猫の種類や年齢、そして名前を書く欄までありました。

(駒野)えさやりさん(餌やりをする人)が普段呼んでいる名前だったり、名前が付いてなかった場合は、その場で付けることもあります。

助成金申請書類
助成金申請書類

助成金申請書類には名前を書く欄も。「ニャン助」、中には「アタマ黒」なんていう即興で付けられた名前も。

(駒野)避妊・去勢された猫は目印として耳をカットされています。何もしない時期やピアスや首輪、ICチップが埋め込まれたこともあったそうですが、再び捕獲されてしまうことがあったり、首輪など何かに引っ掛けると危険だったり。ICチップは読める場所に行かないと判別できないことから、現在では、耳カットに落ち着いているようです。

避妊・去勢された猫は耳がカットされている。
避妊・去勢された猫は耳がカットされている。


-荒川地域猫連絡会とは?

(田中)荒川地域猫連絡会は、町屋から西側の保護団体をまとめて、定期的に情報交換を行っています。また、イベントなどでの啓発活動、広報、里親探しなどをやっています。啓発活動としては川の手まつりでブースを出してパネル展示を行いました。

川の手まつりで紹介したパネル
川の手まつりで紹介したパネル

(田中)里親探しは本来の(避妊去勢)活動からは反れてしまうのですが、お腹に子どものいる猫や生んだばかりの母猫を捕まえてしまったら、子猫も捕獲して里親探しを行わなければならない。1団体よりも、連絡会を通じて、他の地域の団体と連携した方が里親が見つかる可能性が高くなります。今の時期は少ないですが、3、4月は子猫が増えるので恐怖です。放っておくわけにいかないし。。。里親募集は動物病院やペット用品の店にポスターを貼っています。

(駒野)里親について、今までお年寄りへ渡すのは避けていました。それは、お年寄り自身が亡くなったり、入院して飼えなくなってしまう恐れがあるため。しかし、最近80歳くらいのおじいさんから申し出があり、近所に猫好きな息子さんがいることなどから渡すことに決めました。

(田中)しばらくして電話をしたら、猫の世話で張り合いが出たのか、「大変だよ〜」などとうれしそうに話をしてくれました。そんな様子を見て、私たちはお年寄りでも里親さんをお願いしても良いのでは。と思うようになりました。

(田中)野良猫の一生は過酷です。子猫の頃はカラスに狙われたり、冬を越せるか、病気やケンカで命を落とす猫も多くいます。駒野さんの自宅で飼った猫で一番長生きの猫は22年。一方、野良猫の寿命は5,6年ほど。また、最近は家の造りが野良猫にとって住みにくくなりました。昔は軒があり、縁の下など雨風をしのげる場所がありましたが、今は雨が降ったらしのげません。

(駒野)2008年に荒川区が猫の餌やりの関する条例を作りました※参照。マスコミが、”禁止条例”と取れるような報道をしたことから、餌やり禁止と思われている方も多くいるようです。しかし、餌をやることを禁止しているのではなく、”不良状態”にすることが禁止なのです。

(※参照)「荒川区良好な生活環境の確保に関する条例」(2009年4月施行)

この中で「区民等は、自ら所有せず、かつ、占有しない動物にえさを与えることにより、給餌による不良状態を生じさせてはならない。」と書かれていることを捉え、給餌自体を禁止されたような報道がされました。

(駒野)えさやりさんは、餌をやること自体は悪いことではないのでコソコソする必要はない。しかし、餌をやるだけなら簡単で、猫を飼うにはそれ以外の掃除や世話が必要です。週一でも良いのでほうきとちりとり、ゴミ袋を持って歩いて欲しい。本当はえさやりさん達を集めて、役割を分担してみんなで協力できるような体制にしたいです。

(駒野)町屋にはボランティアさんで近隣に迷惑にならないよう、深夜に餌をやっている方がいます。そこでは残った餌を回収する役割の人もいて、そんな感じで、できることを分担するのが理想ですね。


– 地域猫は無くしたいと思いますか?

(駒野)できれば家で飼って欲しい。

(田中)実際はそういう訳にもいかないので、減らすというよりも増やさないようにすることを考えています。ただ、地域猫がいなくなるとネズミ天国になると思いますよ(笑)。

今回、お二人の話を聞いて”地域猫”は単にいる”野良猫”ではなく、地域の人に守られて生きている、まさに”地域猫”なんだ。ということを実感しました。

いきなり、ボランティアさんのように時間的、金銭的犠牲を払うことはなかなか難しいですが、地域の一人として、こういう問題もある、ということを知っておく必要性を感じました。

1件のコメント


  1. 我が家にも猫が来ていますが、地域猫は野ネズミの繁殖を防ぐと言う意味で大切だと思っています。
    猫の繁殖はメス猫の避妊をすることで防いでいますので、五年前には拾数匹の猫が今では四匹と遠くから来る猫二匹の六匹に減りました。
    メス猫を避妊するとオス猫同志が喧嘩をしません。
    糞尿の匂いですが、鶏の生肉を毎日一切れずつあげると臭く無くなりますよ。
    きっと、鶏肉の持つ酵素が猫の腸に良いのかもしれません。
    地域猫は大切な生き物ですので、皆で大切にしてあげましょうね。
    だって、猫のいる島もネズミだらけの島になったら誰も来ませんよね。

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