用事を終えて町屋駅に戻ってきた、4月のある夜。春らしい陽気も手伝って、今日はどこかで飲んで帰ろうと思い立ちました。
この日の「どこか」は、行ったことがない店のイメージ。ふと、近くのバーのカウンターで聞いた「ピテカントロプスには、いつか必ず行こうと思ってるんです」という言葉を思い出しました。
地図アプリをたよりに歩いてみると、目的地は駅から少し離れた住宅街の中。人通りの少ない通りに、小さく灯る明かりを見つけました。大きな看板もない、ひっそりとした佇まい。こういうお店は、だいたい間違いないのです。
静かに流れる時間と味わう、シングルモルトのハイボール
店内に入ると、ほどよく静かで落ち着いた雰囲気。中央には大きなテレビがあり、映画が静かに流れています。マスターの西さんにあいさつをして、まずはラフロイグのハイボールを注文しました。
グラスに鼻を近づけると、ふわっとスモーキーで薬品のような香りが立ちのぼります。その独特の香りの奥には、わずかな甘み。冷たさが全体を引き締めていて、1日の疲れを癒やすリラックスタイムの始まりに最適な1杯です。
カウンターの黒板には、「本日のカレー」の文字が。すでに夕食を済ませていたことを少しだけ悔やみました。また来る理由ができた気がします。
複雑な香りが調和したアブサン
次のお酒は「なにかクセのある変わったものを」とお願いしておすすめしてもらった、山梨の蒸溜所・ギークスティルのアブサン。「伝統と地元ボタニカルの融合」がテーマというこのお酒は、草の香り、ほろ苦さ、そしてほのかな甘みが調和しています。
形やサイズが不揃いで市場には出回らない規格外果実を積極的に活用し、製造工程の一部を障がい者支援施設に委託しているというギークスティル。さまざまな思いが込められた1杯です。
甘くて香りに特徴のあるリキュールって好きなんですよね。バックバーに目をやると、右上の方にはスカーレットやドランブイ、シャンボールも。次に来たときはこの辺りも飲みたいところ。
バーで味わう、一味違う「定番」
クセのあるお酒を飲んだあとには、生ビール。ピテカントロプスではアサヒのマルエフを提供しています。
泡のきめ細かさに驚かされ、口当たりは非常になめらか。やっぱりビールは、こうでなきゃ。
やさしいコクと苦すぎない後味が広がり、まさに「ほっとする1杯」です。
最後にお願いしたのは、角ハイ。どこのお店のメニューにも並ぶものこそ、いいお店で味わう価値があります。
キンキンに冷やした角瓶から作られる角ハイボールは、ピリッとした炭酸とともに、角ならではのやわらかな甘みが印象的。「角って、やっぱりすごいな」と思わせてくれる、余韻まで楽しめる1杯です。
自分のペースで過ごせる、町屋の小さな名店
西さんに「最後に写真を1枚撮らせてください」というと、満面の笑み。あれ? ここまでの会話でこんなキャラだったっけ? またお店に伺って、人となりについてはもう少し深堀りしようと思います。
バーならではのラインナップのほか、ビールや角ハイ、キンミヤを使ったサワーまで幅広いラインナップをカバーするピテカントロプス。
マスターとの会話を楽しみ、自分のペースでゆっくり飲みたい夜にぴったりのお店です。また一つ、町屋の夜の楽しみが増えました。
<店舗情報>
- 店名:THE BAR PITHECANTHROPUS(ピテカントロプス)
- 住所:東京都荒川区荒川6-28-7 前森マンション
- 電話番号:03-6807-8433
- 営業時間:19時〜26時(L.O25時半)
- 定休日:水曜
- Instagram: @pithecanthropus0115