荒川区を撮り続ける写真家、小泉定弘さんの魅力に迫る

2021年3月にオープンしたOGU MAG+にて2021年4月18日まで小泉定弘写真展「あらかわの下町商店街」が開催されています。

小泉さんといえば荒川区を撮り続けている写真家として知られていますがその人となりはあまり知られていません。
今回の写真展は17年前に撮影された尾久の風景ということで小泉さんと一緒に尾久の商店街を歩きインタビューしてきました。

「ここ映画館だったね。学校で映画観にきたことがあって、『二十四の瞳』。」
「ここの写真は飾ってあったでしょ。」
さすが尾久出身、思い出話は止まりません。

「今年は忙しくて全然撮ってないんだよ」
そう言いながらも時折向ける視線はしっかり写真家の目です。

小泉さんは1941年生まれ、荒川区東尾久に生まれ育ち今でも暮らしています。
中高生のころはレコードでクラシックを聴くのが好きな青年でした。
「あまり勉強はしなかったわけ。」と小泉さん。
指揮者や演奏家に憧れファンレターを送ったり、好きな事は一生懸命やるけど勉強はあまりしなかったそうです。
大人になるにつれ漠然と芸術方面に進みたいと思うようになり、写真ならできるんじゃないかと思い日本大学芸術学部に進学。大学では報道的な写真、社会的な風景を撮っていたそうです。その後大学院へと進み、日本大学にて写真教育の道へと進みます。

「身近を写すのがいいんです。」
尾久生まれの小泉さんの出発点、自分の身近、自宅の庭の石や空を撮って作品作りをはじめました。そこから撮るフィールドを拡げて荒川区と接触のある地域を撮っていきます。都電荒川線12.2kmの沿線を撮った作品「都電荒川線」、隅田川22kmの各橋から上流方向、下流方向を撮った作品「隅田川」、明治通りにかかっている歩道橋の上から撮った作品「明治通り」を発表。そして神田川を撮影、撮影エリアも大きく広がったあと荒川区に回帰します。今回展示しているのはそういった背景から生まれた商店街のシリーズの中の写真です。

「ほら、ここの大根持ってるとことかいいでしょ」
「力強いでしょ。これお蕎麦屋さん」
どの写真も生き生きとしていて雑踏の音や話し声が聞こえる様な感じを受けます。そして全ての写真通して言えるのは懐かしさ以上に優しさというか穏やかさです。ここに小泉さんの人柄が出ている様に思えます。

「スナップはスリリングだね。瞬間にすべてがあるんです。」
小泉さんの写真は一瞬のうちに見た光景を撮影するスナップという撮影技法で撮られています。今回展示している写真は全てライカM6にレンズは35mmか50mm。フィルムはKODAKのTRI-Xで撮影しています。50mmのレンズは標準レンズと呼ばれ、人間の視野に近い画角で風景を切り取ることができるのでとても自然です、私の様な職業カメラマン的には物足りない感じもあるのですが、この極々普通のレンズは画角や技術での誇張なくありのままの姿が映るので写真の基本であり王道であり誤魔化しの効かない難しさもあるのです。

「写真人生好きな様にやってきた。人の影響を受けずやりたい様にできたのはラッキーでしたね。」
と、小泉さん。これを言えるのは本当に素晴らしいことだと思います。これからの荒川も撮り続けてほしいですね。
会期も残り少ないですが興味のある人は是非足を運んでください。


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