南千住を拠点に活動するgekidan Uの公演が近いということで稽古を見学してきました。
南千住仲通り商店街の中にある一軒家の2階の稽古場、ここがまさに今回の公演の劇場です。
「Act.4の最初のセリフ重複してるね」
「ここは行った方がいいと思うんだよな」
「伏線的な?」
演出家もキャストも一緒に考えながら台本を読み、直していく作業が続きます。
「私はここをどうしても諦めたくないのでやりましょう」
と、今回の公演「きっと、綺麗な赤の上で」の主人公、景を演じる木村早陽さん。ほわっとしているけど情熱的でとても人間的なところが魅力の役者です。
物語は実際の家の中で過去と今が交差しながら進んでいきます。
「景はご飯を食べる。眠る。シャワーを浴びる。歯を磨く。
一人で咽び泣いた夜もあったけれど、私には2人がいた。
疲れるまで飲んだ。喧嘩した。仲直りした。楽しかった。
そんな日が毎日だって続いて欲しかった。続くと思ってた。
きっと帰ってくるよね?
待ってていいんだよね?
どうして2人は
いなくなってしまったのだろう?
きっと私にはわからない。
全て家の中の話」(公演チラシより)
「この物語は実際のモデルがいます。自分の体験を基にしていて、もともとは主人公が男のストーリーだったんです」
と話すのはgekidan Uの主宰者、遠藤遊さん。
ある公演を観に行った時に出演していた木村早陽さんを観て、直感的に主人公にしたいと感じ出演を依頼。彼女のために女性が主人公の脚本に書き直しました。
他の出演者も紹介しましょう。
今回、初めて演劇に出演する高野恭子さんは受け取る力が強い役者さん。
この芝居のバランサー役でもある汀さんは公演のフライヤーを作ってくれました。
gekidan Uでは3回目の出演になる真坂雅さんは稽古場のムードメーカー。笑っちゃうぐらい明るく元気な役を演じます。
そして遊さんと一緒にgekidan Uを作っているヒガシナオキさん。主人公を好きな男の子を演じます。役者であり今回の公演では舞台監督も務めます。
彼らのストーリーをまさに実際の家の中で観るという演出は、外で観ることのできない人間の感情を垣間見てしまう体験したことのない感覚でしょう。
「家」というプライベートな空間を劇場にする、場所との繋がりを最重視してきたgekidan Uとはどんな劇団なのでしょうか?
遊さんは劇を作りたいという衝動だけで2012年gekidan Uを旗揚げします。
「最初はどう演出するかもわからずスタートしました。知らない強さです。」
大学で演劇を学んだのですが、なんと大学に入るまで演劇を観たこともなく映画もほとんど見なかったそうです。
最初は小劇場で公演していましたが、ロンドンのグローブ座に憧れて南千住の拠点の前の駐車場で公演を始めて5年。
「南千住での初公演はお客さん8人。全員関係者でしたねー」
毎年1回の公演を続けていくうちに知名度も上がり、今では近隣の人たちも応援してくれています。
「生活の中で生まれる芝居を作りたいんです」
南千住は自分を作ってくれた街と話す遊さん。
17歳の時、南千住に引っ越してきたときは怖い街だなあって思ったそうです。友達も知り合いもいない街。
しかし暮らしていくうちに仲間が繋がり少しずつひらけていく。
「荒川区は好きな場所です。だから街にある劇団でありたいし、街の不思議の一つでありたい。
ここなんだろう?と、子供たちが思って未来が変わるきっかけであったら。何かあそこやばいよ…、って」(笑)
今まで一貫してパーソナルな部分を見せる作品を作ってきた遊さんが、今回初の試みとして自宅を舞台にした作品を書くのはまさに必然とも言えるでしょう。
小劇場から南千住へ、野外から家へ。同じストーリーでも劇場で観るのと人の家で観るのは緊張感が違うはずです。
「芝居はメディアとして最弱なんです。どこでもなんでも好きな時に見られる時代にたまたま街の中で観れたり、出会えるのがいいところですね。今後はもっと多くの人に観てもらえる芝居を作りたい。子供も楽しめる芝居とか。」
あまり悩まず作品のイメージがどんどん浮かぶという遊さん、今後の劇団の活動にも目が離せません。
gekidanU家公演企画 Vol.1 「きっと綺麗な赤の上で」
作・演出 遠藤遊
4月13日(金) 20時~
4月14日(土) 13時~、17時~、20時~、
4月15日(日) 13時~、17時~
※受付開始/開場は開演の30分前
南千住gekidanU屋内劇場(荒川区南千住5-25-6)
【料金】 当日/予約共に2,000円 ※ワンドリンク付き
【予約】 https://www.quartet-online.net/ticket/gekidanu
【出演】
木村早陽
真坂雅(重惑[omowaku])
汀(劇団フェリーちゃん)
高野恭子
ヒガシナオキ(gekidanU)
【スタッフ】
舞台監督:ヒガシナオキ(gekidanU)
制作:高村 楓(冗談だからね。)
宣伝美術:汀(劇団フェリーちゃん)
gekidan Uホームページ
http://gekidanu.com/