光でコロナを退治!西日暮里の細渕電球は光を知り尽くすスペシャリストだった

先日、荒川区の電球メーカー、細渕電球が純国産高性能ライト「殺菌灯ユニット」をサンプル出荷開始するとプレスリリースを出しました。

長引くコロナ禍の中、「光による殺菌で新型コロナウイルスの感染を防止!」なんてとても気になるリリース。「殺菌灯ユニット」なんて名前もダイレクトでどんな強力な灯りなの?と思い、早速訪ねてきました。

細渕電球は三河島駅から徒歩5分。常磐線沿いに西日暮里方面へ行く途中に本社があります。

昭和13年に北区で創業し(当時の名前は細渕特殊電球)、何度かの移転を経て昭和59年(1984年)に荒川区に移転し現在に至ります。

創業以来、医療機器用の極小電球を中心に、今では少なくなったオーダーメイドの電球メーカーとして特殊な用途に耐えうる様々な電球を開発してきました。

ところで皆さん、胃の中を直接撮影する胃カメラ、知ってますよね?
あれを飲み込むのはとても辛くて飲むなら死んだほうがましだ、、、と思うほどですが、胃がんや胃潰瘍の発見には欠かせない医療機器。

1954年、この胃カメラのカラー画像化に世界で初めて成功したのが日本であり、その実現に不可欠だった撮影用ランプの開発を成功させた会社が細渕電球。

胃カメラのカラー化により、胃壁の色の変化を的確に捉えられるようになり、胃がん・胃潰瘍などの早期診断が可能になりました。今でこそ普通になっている胃カメラですが、医療の世界を変え、人々の生活を変えた画期的な製品を作った企業が荒川区にあったんですね。

当時の内視鏡ランプ。極小のランプ2つ(高輝度用、照診用)が胃の中に直接入る仕組み

細渕電球の真骨頂は、光学、つまり波長を知り尽くした技術陣。

「例えば、340nmの波長だと血液分析用。850nmだと赤外線になって警備会社が使うセンサーのようなものに使用されます。1096nmだと水の吸収波長なので浄水場の水検査機器に使われたりします。つまり単に光らせるということではなくて、用途に対してどういう波長の光が必要なのか。これを商品にしています。」

国内や海外に工場もありますが、西日暮里の社屋では実際に手作りでコツコツと電球を作っています。その様子は様々なメディアでも紹介されました。

職人さんが集中して作業をしているところに取材に行ったりして怒られるかなあ、と少しビクビクしながら職場にお邪魔しましたが、皆さん気さくな方ばかりで快く作業風景を見せてくれました。

実は、眼科の手術用のランプでは多くが細渕電球のランプを使用しているのだそうです。

「目の手術をするランプには微細なスリットを入れてそこから光を出しますが、そのためには(光源となる)フィラメント位置を0.1mm以内に収める技術力が必要です。また、当社ではガラスも職人さんが吹いており、これによって凹凸のない綺麗な表面のガラスが出来ます。」

職人が吹いたガラスは歪みがなく底から覗くと綺麗に見えます。

例えばランプの質が悪くガラス面に傷や歪みがあれば、それが眼球に投影されてしまい医者は目の傷と見間違えてしまいます。

そのような過ちを発生させない微細加工が可能な細渕電球の職人の技術が、医療機器業界から高い評価を獲得しているんですね。

「東京市」だったころの機械が現存

さらに現在、細渕電球では「鑑賞して楽しむ」をコンセプトとした新しい製品、「華洋燈」を準備中。
職人の技術の粋を凝らし、灯りを点けずとも華のように美しく、灯りをつければ本物のフィラメントだからこそ実現できる灯りでまわりを照らす。

気になる人は細渕電球のインスタグラムを要ウォッチです。

さて、今回見たかった新製品の「殺菌灯ユニット」はこちら。
案内された会議室で目の前に置かれていたのは見た感じ普通の蛍光灯のようなボックス。

企画が始まったのは2020年末。「コロナにやられっぱなしだったし、自分たちで何かしないと!」と考え始めたという殺菌灯。UVカット加工されたカバーを閉めれば光が出て、開ければ消える、という安全スイッチや、時間が立つと消灯するタイマーなどを標準で装備しています。

「殺菌灯の明かりというのは絶対に目に入ってはいけないんです。なので、開閉機構とライトの点灯を連動させました。」

カバーを開けると自動的にライトが消灯します

市販の殺菌効果をうたっているLEDライトを使った製品などには、理論上殺菌効果が無いと容易に想像できる海外製の製品などもたくさんあると高橋さん。

細渕電球の殺菌灯ユニットでは確実な殺菌効果を持つ254nm波長の光を出す紫外線ランプを使っています。だからこそ、間違えて目にあたったりしないように設計することが大切になります。これなら、利用者は何も知らなくても間違えが起きず、安心ですね。

電源は普通の100V電源から取得しており、持ってみましたが非常に軽量。どこにでも簡単に設置できてすぐ使用できるということが実感できました。

ところでこれってお高いんですか?と社長に聞いてみると、サンプルユニットは1台数万円レベルとのこと。

職人が手作りした、確実な殺菌効果が見込める高品質な製品がその価格で手に入ってすぐ使えるなんて、驚きです。手軽に導入できるので荒川区内の事業所やお店の方もぜひ問い合わせてしてみてください。

最後に髙橋社長がある手紙を持ってきてくれました。
それは、医療関係者からの感謝のレターでした。

「こういうものを頂くと本当に励みになります。」

世界初のカラー内視鏡カメラの成功で一つの時代を作った会社。これからも職人の手仕事による高品質な製品を武器に、医療現場など様々な分野を支えていってほしいですね。荒川区にこんな会社があると知ってまた一つ嬉しくなりました。


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