心も体ものびのびできる! 子どものための美術教室、アトリエぴーす@西日暮里

講師の島崎果歩さん(写真左)、講師で教室主宰の高田ひかるさん(写真右)。

日暮里舎人ライナーの西日暮里駅近く。
素敵な子ども向け美術教室が誕生したと聞き、早速取材に向かったその場所の名は「アトリエぴーす」。

主宰の高田さんと島崎さんは、ともに武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科を卒業した同級生。昔から子どもの描く絵が大好きだと語る高田さん。子ども絵画教室での講師の経験を持つ一方で、2019年にはアートオリンピアという国際公募展で佳作を受賞。高田さんがパートナーとして心底信頼している、島崎さんは、学童保育所での指導員としての経験があり、同じく2019年にACTアート大賞展にて優秀賞を受賞しています。

そんな2人のアーティストが、絵を描く楽しさや、絵から得られる大きな力を、子どもたちとその保護者に伝えたいという思いから、「アトリエぴーす」はスタート。
子どもが夢中になって絵を描いている姿は平和そのもの!と、高田さんと島崎さんとで名付けたその場所は、名前の通り、いや、それ以上に子どもたちにとってピースフルな空間でした。

ちょうど取材したこの日はワークショップ開催日で、2歳から小学2年生まで9人の小さなアーティストたちがハロウィンの衣装作りを楽しんでいました。いつものレッスン(レッスンは5人まで)よりも人数が多くなったワークショップには高田さんのご兄弟もヘルプとして入り、計4人の先生が子どもたちの制作を見守っていたのです。

2時間のワークショップは、子どもの感性が弾ける濃厚な時間

帽子に沢山の模様をつけていく子や、マントにかぼちゃのイラストを描く子。大胆な筆遣いや色にハッとさせられます。

ハロウィンの衣装といっても皆で同じものを作るわけではありません。作業台の上には帽子、マント、ステッキ、仮面などのベースになる材料に、絵具やサインペン、色鉛筆などの画材道具、そして毛糸やフエルトなどの素材がたくさん!
子どもたちはこの中で作りたいものを好きなだけ、時間一杯作ることができるんです。

子どもたちの制作を手伝う高田さん。鮮やかな手つきです。

先生からのお話は簡単な注意事項のみ。だからこそ、ルールに縛られることなく子どもたちは自分の感性の思うままに色を塗り、紙や毛糸をペタペタ。その所作に迷いはなく、瞳は好奇心で輝いています。
時間配分をしながらいろんなアイテムを手際よく作る子もいましたし、職人のように一貫してひとつのものをつくりあげる子もいました。

子どもの作品の完成を一緒に喜ぶ島崎さん。

そう、誰一人同じことはしていません。9人子どもがいれば9人のやり方がある。そんな当たり前だけど忘れがちな事実を知っているのでしょう。アトリエぴーすの先生たちは学校の先生や保護者だったらつい「自分でやりなさい」と言ってしまいそうな小さなSOSに応える一方、「こうした方がいい」といったアドバイスはしません(もちろん質問には答えますよ)。
終始9人の表現者たちの感性を形にするお手伝いに徹しており、結果、子どもたちの集中力は途切れることなく、すばらしい作品があちらこちらで誕生したのです。

ワークショップの最後には自分の作品の紹介タイムを設けています。

あっという間に2時間が過ぎ、各自制作した作品を紹介する時間です。この発表の時間を高田さんと島崎さんはとても大事にしていると語ります。
「誰かから自分の作品を好きだと言ってもらったときの気持ちは、勉強を褒められることとは違った喜びだと思います。正解のないものや言葉にできない深い感覚の部分で人とわかりあえるからです」(島崎さん)
ハキハキと答える子にも、恥ずかしくて下を向いてしまう子にも、お二人は愛情をもってその作品の魅力を伝えていました。その気持ちが通じたのか、子どもたちの照れたようなうれしい表情がとっても印象的でした。

なぜ、こどもたちに美術が必要なのか

ワークショップ終了後インタビューに答える島崎さんと高田さん。

「絵を描くことは、今まで見たもの、記憶、感じた色や匂いや質感を、自分だけの力で表現できます。だから、絵を描くことが日常になると、ものを見たり感じたりする観察力や発見する力、想像する力、発想する力がつきます。しかも、それだけではありません。柔らかい絵の具や粘土に触れたり、自分の手で自分の好きな色や形を生み出せたときは、きっとすべての人が夢中になる瞬間です。野原を走ったり土遊びをしたりするような、原始的な気持ちよさをからだで感じることができます」(高田さん)

絵を描く魅力、その必要性について真摯に語る二人。

「絵を描くことでこころも豊かになります。言葉にできない感覚を表現すること、自分の頭の中だけで想像していた世界をみんなに見せることができるということ、自分の好きな色や形を知ること。表現することによって、人は、自分を今よりもっと好きになれるのだと思います。
そして、人生のなかで学校や会社や家庭など、いろいろな枠組みの中に閉じ込められて辛くなってしまったとき、「じぶんは表現ができる」という自信は、きっと助けになります。表現の世界は、枠組みもない、やっちゃダメなこともない、自由の世界だからです。」(島崎さん)

表現ができる素晴らしさを真剣なまなざしで語ってくれた高田さんと島崎さん。
最後にある作品を見せてくれました。

5歳の生徒さんが1人で描きあげた作品。全身を使って描いた大作。

「手や足の裏に絵具をつけ、絵具を飛ばして…全身を使って描き上げた作品です。出来上がりを見て驚きました。5歳の小さな子にこんなパワーが潜んでいるということに。この絵を描いた子が特別なのではありません。子どもたちには爆発的な創造力があって、それを一番具現化しやすい表現が絵なんです」(高田さん)

たしかに、現代を生きる子どもたちにとって、自由に何にも縛られず表現ができる場所や時間は限られているように感じます。そんな子どもたちが、ほんの少しでも素直に自分と向き合い、創造力を表現できる場所。それが「アトリエぴーす」なのかもしれません。





アトリエぴーすの3つのこだわり

⑴ 講評
毎回の授業終了時に、制作した作品について子供たちが発表する機会を設けています。美術に触れる事だけではなく、自ら発表する機会を通して、物怖じせず自分の考えを人前で話せるようになるための自信を付けてもらいたいと思っているからです。また、他の人の作品を見ることや発表を聞くことも大切な学びとなるため重きを置いています。

⑵ 少人数制
一コマの授業の定員は5人です。教室が広い分そのスペースを一人一人が思う存分使えるようにあえて少人数制にしています。表現力・創造力をそのまま形にできる環境を目指しています。

⑶ 年齢でクラスを分けない
3才~12才の年齢幅がありますが、年齢によってクラスは分けません。なぜなら表現力の基礎は人の物を見て真似るところから始まるからです。その表現力に年齢は関係なく、お互いが刺激しあってより良い物を作れるようにするためです。また、普段接する機会が少ない同年代以外の子供同士がコミュニケーションを取れる場にもなります。

スケジュール

【火・水・木・金】15:30~17:00/17:10~18:40
【土】13:30~15:00/15:20~16:50


<スクール概要>

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