町と音楽の響き合いに感動!ONLINE南千住ぶらり下町音楽祭の収録に密着

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10月19日の朝。
穏やかな朝空のもと、静謐な空気を漂わせる南千住の素盞雄神社の境内に、4人の音楽家と撮影クルーが、集まってきました。

この日は、オンライン開催となった「南千住ぶらり下町音楽祭」の演奏の収録日。
南千住内の神社やお寺、学校などを車で移動してながら1日の間に合計6回もの収録を行います。
プロジェクトをリードするのは、NPO法人千住すみだ川の海老江重光さん。

この音楽祭は、オーボエ奏者の渡辺佳代子さんが元々2008年に墨田区で開始。
その後、2010年から南千住でも開催するようになりました。

第1回の音楽祭の初回の演奏が行われたのが南千住の銭湯、草津湯。
そこで演奏された音楽を聞いたとき、主催者である海老江さん自身も「鳥肌が立った」といいます。

「実際の演奏を聞いてみて、開催前に思っていた以上に良いイベントなんじゃないかと思いました。音を聴きながら町を歩いたら、町も違って見える気がするんです。プロの演奏家の音が、町の人々の営みや歴史に寄り添う。そんな音楽祭だと感じています。」(海老江さん)

記念すべき第10回となる予定だった南千住ぶらり下町音楽祭ですが、一時はコロナもありイベントを中止にすることも考えたという海老江さん。
音楽家に演奏の場を提供したい、という思いもあり、オンラインでの実施を決断し、渡辺さんに打診。
しかし、渡辺さんは当初難色を示しました。

「音楽は時間芸術であると言う思いもありました。音楽家は一瞬、一度の本番の為に練習をし、本番の一瞬で消えるからこそ尊いもの、芸術であると言う考えです。」(渡辺さん)

そんな渡辺さんの考えを覆したのは海老江さんの熱意。
そして、ITを駆使し、いつでもその場所で演奏された音楽を聴けるようにする仕掛けを導入する考えや、普段なかなか入れない神楽殿での撮影、ドローン撮影による新たな町の魅力を発信など、新たな可能性を感じる海老江さんの様々な構想に渡辺さんも考えを変更。初のONLINEでの実現に向けて動くこととなりました。

この日、1200年の歴史で一度も西洋楽器が入ったことのない神楽殿に初めて西洋の音楽が流れます。

演奏前にまず参拝を。

今回演奏するのは志田雄啓(テノール)、渡辺佳代子(オーボエ)、山本徹(チェロ)、長久真実子(ピアノ)の4名の音楽家。
早速4人が神楽殿に入り、音の調整を始めます。

「すぐ撮り始めます? 少し合わせます?」

並行して撮影の準備を進めながら、細かく指示出しや構図の調整を入れていくのは海老江さんの役割。
神楽殿というオープンスペースで、芸術家の演奏を感じ取れる良い音がとれるか「心配だな、、」と言いながらの進行。その緊張感が伝わってきます。

見守っていると、おもむろにテノールの歌声が神楽殿から流れ出しました。収録開始です。

鳥のさえずりが聞こえるなか、豊かな音色が流れるように境内に満ちていきます。
1200年の歴史と西洋の音が融合した瞬間。
コロナ下において実現した何とも心地よいハーモニーに、人も鳥も聞き惚れる。

そんな中、時折響く、参拝の鐘の音。
日常に根付いた信仰の中と奏で合う、本物の音楽。
最初は心配げな面持ちで見守っていた宮司さん含め、周りを囲う面々は一様に感動の面持ちに。

神楽殿での収録が終わり向かったのは草津湯。

ガラガラと音を立てて、扉を開けてもらうとそこは昔ながらの銭湯。
番台と高い天井、そしてペンキ絵。
まだ客のいない朝10時すぎの爽やかな空気の浴場が演奏の舞台。

まずはチェロの山本さんの演奏。

「3, 2, 1」

合図のあと、少しの間を置いてゆっくりと流れ出す音。
浴場いっぱいに溢れ出すようなその音色に、何度も聞いてきたはずの皆さんも思わず「おーーすごい!」とため息。

続いてテノールの志田さん、ピアノの長久さんによる演奏。
海老江さんが、細かなセッティングを行います。

収録が始まると、ピアノの演奏とともに銭湯中に響き渡るテノール。

音が体内に深く深呼吸するように入りこんでくる。その没入感にしばし身を委ねます。
演奏が終わると余韻のある静寂が辺りを包みます。
まるで映画のエンドロールのように、一瞬、みな動かず、音が静かに消えていく。

収録後、このイベントを10年も続けた原動力は?という私の問いに、海老江さんはこう答えてくれました。

「第1回の公演の時、地元のおばあさんに『感動しました。若い時はN響の定期公演に行ったりしていたのですが、歳を取り足腰悪くなって行けなくなっていた時、こんなに近くで一流の演奏が聞けるなんて夢のよう。ありがとう』と涙声でお電話をいただきました。第8回の最終公演のオペラ『カルメン』の終演後には感動して涙を流してくださっている方もいました。地元の方や音楽の愛好家など皆さんに喜んでいただけ続けて欲しいと言われるんです。喜んでいただけると嬉しいのでそれは原動力でもあり、責任感のような気持ちもあります。」

本番の「生」の演奏の感動を、町中で提供しつづけたきた下町の音楽祭。
その生の感動を、今年はオンラインで、いつでも、どこでも。

11月3日から演奏動画の配信がスタートし、9日までの間、毎日1本の新しい動画が公開されます。
演奏が行われた各会場にはQRコードも設置される予定。

「スマートフォンがあれば、誰でもいつでも、ぶらり下町音楽祭を楽しめます。是非スマーフォン片手に南千住の町で音楽散歩にぶらりとしていただきたいです。」(海老江さん)

新しい形の音楽祭。
ぜひお楽しみに。

ONLINE南千住ぶらり下町音楽祭(荒川区ホームページ)

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