町屋四丁目の路地裏に、新たな街の縁側「喫茶さくら草」ができました。
場所は、旭電化通りの尾久の原公園付近を南に少し入ったところ。
ここには、できたばかりの三階建の建物「ロジハイツ」があります。
荒川区のデザイナー大家である戸田江美さんの、「トダビューハイツ」に続く二棟目の賃貸住宅です。
(戸田さんには以前、荒川102のリニューアルにあたり、ヘッダ画像のイラストなどにお力を借りました)
戸田さんには、ロジハイツの1階から3階まですべてを住戸とするのではなく、1階には街に開かれたお店に入ってほしいという思いがありました。
その思いに呼応するかのように、戸田さんのお友達が開業されたのが「喫茶さくら草」なのです。
ちなみに、店名となっている”さくら草”についてご存知でしょうか。
これはいわゆる樹木の桜ではなく、高原や草原に群生するサクラソウを指すようです。
(記者が知らなかった)
お店の周辺・尾久の原の土地が、まさにこのサクラソウの群生地として古くから有名だったことにちなみ、店名に採用されたということです。
使い勝手のよい喫茶店メニュー。嬉しいモーニングメニューも。
「喫茶さくら草」ではどのようなメニューが楽しめるのでしょうか。
使い勝手の良い喫茶店という印象で、ドリンクメニューとデザートのほか、カレーやスパゲッティなどの軽食メニューも用意されています。
ドリンクでは、幅広いコーヒーのメニューが印象的です。
例えばホットコーヒーも、ブレンド、キリマンジャロ、マンデリンといった選択が可能です。
デカフェが選べるのも嬉しいですね。
抽出はサイフォン式なので、ご家庭ではなかなか味わいにくいコーヒーを楽しむことができます。
また、アルコールメニューも用意されており、生ビールやレモンサワー、緑茶ハイなどがメニュー表に記載されています。
喫茶店では少し珍しい印象ですが、気分に応じて楽しみ方を変えられるのが嬉しいですね。
食事メニューとしては、焼きそばやカレー、スパゲッティ等の喫茶店らしいメニューがあります。
また、10:30までは600円のモーニングメニューもあり、トーストやホットドッグから選ぶことができます。
木目を基調とした暖かな店内。
店内を見てみましょう。
訪問した時点では、コンパクトな空間に、4人がけのテーブル席が一つと、2人がけのテーブルが三つありました。
取材時にお見かけしたお客さんはいずれもおひとり様だったので、一人でふらっと訪問するシーンが多そうです。
お店の運営は、店主の竹前さん一人をメインとしつつ、状況に応じてご家族がサポートされています。
今回訪問した14:00頃の体制は、竹前さんが一人。
その日は雨天だったこともあり、お母様が少し早くに帰られたばかりだったようです。
ご家族が近くにお住まいだからこそ可能なフレキシブルな運営、納得ですね。
営業時間は朝6:30から、「元気がなくなる」まで。
この「さくら草」、なんと現在のところ、毎朝6:30から営業されています。(土日は9:00から)
お客さまの潜在層として、近くの尾久の原公園で早朝のウォーキングやジョギングをされる方々からのニーズを想定しているからとのこと。
一方で、閉店時間はまだ決まっていないようで、入口には「元気がなくなるまで」のメッセージが。
これについても伺ってみました。
基本的には17:00くらいまでの営業を想定しつつ、天候等による影響に対応するためということが理由の一つのようです。
もう一つの理由は後述。
4月27日のオープン以降、大型連休(GW)いっぱいは休みなく走り切りたいとのこと。
ただ、以降は火曜を定休日とされるそうです。
荒川区に生まれて荒川区で開業するまで。
開業までのエピソードを少し伺ってみました。
マスターの竹前さんは荒川区で生まれ育ち、美大へ進学しました。
同じ荒川区出身者である戸田さんとは、大学の学友として出会われています。
竹前さんには、かなり前から漠然と、誰とでも軽くおしゃべりできる、昔ながらの喫茶店のような場所を作りたいという思いがありました。
しかしそれは、ご自身のライフプラン上かなり先のこと。
定年後で構わない、くらいの長期プランだったようです。
したがって、美大をご卒業した後は、東京都外の会社へ就職。
退職直前までは、一般的な事務職としてお仕事をされていました。
しかし在職中、主にプライベートにおいて、「やりたいことは元気なうちにやっておかなければ」と思わせる様々な出来事を経験されます。
結果、約4年勤めた会社を退職するという決断をされました。
荒川区へ戻り、喫茶店の開業を睨みながら、区内の喫茶店で修行を開始することになります。
そして今回、ご友人である戸田さんが新たな賃貸住宅を建設するにあたり、一階での喫茶店開業を決められたのでした。
慣れないDIYとの消耗戦。
物件はスケルトン(躯体にボード張り程度)の状態で引き渡されるため、テナント側で内装工事を実施する必要があります。
今回は、厨房やトイレ等の設備まわりを除き、できるだけ竹前さんがDIYで内装を施工されたということでした。
もちろん施工について技術的なノウハウがあったわけではないので、体当たりでやるほかありません。
だからこその苦労話を、たくさん教えていただきました。
「壁紙貼るのってあんなに難しいんですね。。。」
「前の仕事が下水道関連だったので、排水には多少詳しいです」
全てをここで紹介するにはもったいないので、お店を訪問した際に、ぜひ店主の竹前さんに尋ねてみてください。
また、こうしたDIY作業には想定以上の期間を要したそうで、開店予定日をかなり後ろ倒しにせざるを得なかったご様子。
「母の提案で、大安日である4月27日をオープン日に再設定したものの、ギリギリまで準備作業に追われ、営業時間や定休日などの細かなことを決められないままオープンしてしまいました。」
「扉にある「営業時間 6:30〜元気がなくなるまで」というのは、そのせいです(笑)」
そう、これが「元気がなくなるまで」のもう一つの理由。
店主の竹前さんが、ご家族と共に荒川区で生まれ育ったということで、現在のところはご家族や知人のつながりをきっかけとした来店が目立つようです。
そして早くも、新しい日常が始まっています。
この日の取材中も、
竹前さんがお客さんと何気なく話していたり、
営業中に「まだやってる?」と電話がかかってきたりなど、微笑ましいコミュニケーションの様子が見られました。
こうした積み重ねが日常を作っていき、地域の方々のサードプレイスとなっていきそうですね。
町屋にできた新しい縁側に、ぜひ行ってみてください。
<店舗情報>※5/1(日)取材時点
- 店名:喫茶さくら草
- 営業時間:6:30(土日は9:00)~元気がなくなるまで
- 定休日:火曜日
- 住所:東京都荒川区町屋4-35-4
- 電話:090-5815-9761
- twitter:@kissasakurasou