チョコレートの台座?生活の中に潜むその人らしさを形にする 86400″

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「チョコレートの台座」。
と聞いたときにみなさんはどんなものを思い浮かべるでしょうか?

台座がチョコレートでできているの? ちょっと、違います。
まずはこの動画を見てみましょう。

このユニークな商品を企画したのは、先日行われた荒川区ビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞した86400合同会社。

金属加工製品を軸に「生活を押し拡げる」プロダクト作り、をかかげるブランド86400″を運営しています。
一体どういう意味なのか、荒川区役所の裏にある86400″のオフィスを訪ねてきました。

 

1. 2人の建築家が創業


86400″を率いるのは代表の山本展久さんと、志水昭太さんのお二人。
2人は同じ大分大学の建築・都市計画研究室で学んだ仲であり、専門は建築になります。

山本さん(左)と志水さん(右)

山本さんは神戸市の生まれで、大学卒業後は東京にてすぐに建築士事務所を開設して独立。以来ずっと荒川区に在住し、消防団などにも参加してきました。

一方の志水さんは熊本の生まれ。大学卒業後は同じく東京で仕事を始めますが、一時はカンボジアに渡って学校の建設プロジェクトに関わるなど各地を転々としてきました。

学生のころから2人で一緒にコンペに参加するなどしていた2人。東京に出てきてからも共同でコンペ案件に関わるなど関係は続きます。

何かに没頭する性格の山本さんは小さいころからものづくりが大好き。小学校から大学までずっと美術部に所属し、中学生のころからコンクールへの出展などの活動も始めます。

「母親も薬剤師だったので資格をもった職業についてほしいというのは何となく感じてました。父親も物を作るのが好きな親で、釣りによく行っていたんですが、釣ってきた魚を粘土でリアルに再現するようなことを良くやっていました。そういう両親の性格を引き継いだのかなあとは思います。」(山本さん)

一方の志水さんは、小さいころから家にあった祖父の大工道具でものを作って遊んでいたと言います。

「最初は大工になろうと思っていたんですが、進学するときに建築家という職業があることを知って、色々やりたいことがあった中で建築の道を選びました。」(志水さん)

もともと商品企画の会社を立ち上げることは考えていなかったという山本さんですが、所属する消防団の分団長でもある、荒川区の金属加工職人の方に「自分でも何か作ってみたら」と言われたことを契機に事業化を考え始めます。
プロジェクトは2018年に開始。2019年に86400合同会社として法人化します。

 

2. 「生活を押し拡げる」プロダクトを展開する86400″。その名前に込められた思い。


会社のコンセプトは、建築士として数々の家づくりなどに携わってきた山本さんが見てきたクライアントの悩みから誕生しています。

「たとえば家を設計するとき、流行りの”暮らし”や”ライフスタイル”に飲み込まれ、自分がどんな生活を望むのか思い悩むクライアントの姿を多く目にしてきました。ただ、家は一生に一度の買い物で、いきなり”自分らしい生活”を考えるにはハードルの高い対象です。だったら、もっと身近な家具・日用品を課題にできないか。その方にとって嬉しいと感じる瞬間や、日々悩まされていることをもとに「生活の道具」を作り、それを使って”あなたらしい生活”を楽んでもらいたい。また、使っているうちに日々の中から自分の新たな側面を発見し、生活そのものを育てていってほしい。そんな「生活を押し拡げる」ためのプロダクトをデザインしたいと思っています。」

オフィスには懐かしのチョロQのコレクション。右は建築で手がけた案件。

時間を楽しむことをテーマにした商品をラインナップしていくという意思。その思いは正式名称「ハチロクヨンゼロゼロ」と読む社名にも込められています。
実は、86400″の最後についている「”」。これは「秒」を示す記号であり、86400″で1日の秒数を表しています。

「1日をズームするように、それぞれの生活を細かく見つめ、その人らしい生活をデザインする。 86400″という名前にその姿勢を込めました。」(山本さん)

生活をデザインする

現在販売されている商品はオーダーメイドで開発したもので、いずれも手作りによってクライアントの思いをふんだんに表現したため、比較的高価格帯のものとなっています。
86400″では、こういった製品は事業コンセプトを体現するフラッグシップモデルと捉え、今後はこれらから派生するようにデザインし、少し価格を抑えた商品も展開する予定です。

 

3. 問いかけ、イメージし、言語化する:2人で作るものづくりのプロセス


長年一緒にさまざまな仕事を手がけてきた2人。同じ建築家ではありますが、お互いの得意分野は異なる様子。
代表の山本さんの仕事は、手がけているプロジェクトが求めるものについての問いを志水さんに投げることなんだと言います。

問いかける

「志水はデザインのセンスが良く、何かを一緒にゼロから考えても彼は「ポン」と形が出てくるんです。こういうことをしたい、こういう形がいいと思う、という形が彼の頭の中から出てきて、そこに僕が物語を重ねていくということが多いです。」(山本さん)

「山本は言語能力がすごいんです。私は頭の中にイメージはあるのですがそれを言語で表現するのが苦手なんですが、山本と会話をしていると僕が持っていない言葉を投げてくれるので、それによって自分がイメージしている形もさらに明確になっていくんです。」(志水さん)

イメージが生まれる。

イメージを作る志水さん。そしてそこに意味を足していく山本さん。このやり取りからユニークな商品が生まれてくるのが86400″の強み。問いに対する形が志水さんから出てこないときは問いが悪いのだろうと考え、また別の問いを投げる。このプロセスを何度も繰り返すのだそうです。

お話をしていると、お互いがお互いの能力を熟知していて、そこに全幅の信頼を置いていることが透けて見えてきました。

 

4. 自分のために作った「チョコレートの台座」


チョコレートの台座は、甘いものを食べ過ぎてしまう個人のために作ったオーダーメイド品。実はその個人とは山本さん自身。最初はブロックワックスを使い、山本さん自身がカッターで削っていくつかパターンを制作。それを元に志水さんに「もっとかっこよくして」と依頼し完成したものです。

チョコレートの下からじわりと溶け出します

「自分が作ったときはもう少し丸くてボテっとしたものだったんですが、志水が今のシャープな形に仕上げてくれたんです。」

試作の過程でいくつかの面で自立させて複数の面にチョコレートを乗せられるようにできることに気づいた2人。

「この商品に毎日チョコレートを乗せて食べるわけでもなく、どちらかというと飾っておくことのほうが多いです。現在の形で立つ面が7つあるんですが、その方が色々な見え方ができて遊ぶことができて面白いんですよね。どの方向から見ても同じようには見えないようになっています。」

こんな置き方も

シリコンブロンズでできた製品は、持ってみると意外な重量感です。
動画でも紹介されていたように、お湯で温めたり冷蔵庫で冷やしたりした上でその上にチョコを置き、変化を楽しみながら食べます。

「私も知らなかったのですが、チョコレートは溶けると甘みが増すんです。チョコレートが溶けてくると強い香りが出てきて「あ、溶けてきているな」というのが分かります。」(山本さん)

甘い芳香を放つチョコをすくっていただく

普段はこの台座を机の上に置いているという山本さん。台座が近くにあることであまりチョコレートを食べ過ぎなくなったそうです。

「チョコを食べるまでの下準備が必要なので良い面と悪い面がありますが、使うときは気合いを入れて食べる、という感じになりますね(笑)」(志水さん)

86400″が販売開始済みのもう一つの商品である「ケーキのお皿」も、ケーキが大好きな山本さんの「ケーキが傾かずに綺麗に立つような底が平らなケーキ皿がほしい」という欲求から開発されたものです。

「ケーキだけでなく、和菓子や、小ぶりのパンなんかを乗せるのにも良いのかなと思ってます。このお皿に乗せるだけで少しサマになります。例えば、錫のメッキをしているので、メッキのところに光が当たり、レフ版効果でケーキが映えて綺麗です。」(山本さん)

どちらの商品も、最終工程では志水さんが自ら研磨や切り欠け加工などを行い、手作業による最終仕上げを行なっています。

最後は手作業で仕上げ

 

5. 生活の中にある一瞬の喜び、小さな悩みを丹念に見つめ、ひとりひとりの生活を育んでいけるか。


86400″では、クライアントの要望に対してヒアリングを重ね、何を作りたいかから一緒に考えるフルオーダーメイド方式と、あらかじめ設定したテーマに基づいて商品を開発し、その商品をベースにクライアントがそれぞれの生活にあわせて素材や形、大きさ、使い方などを自由に変えることができるカスタムオーダーメイド方式の2つの開発方式があります。

「基本的にはその人の生活ぶりが表れていればどんどん作っていきたいですね。家を作るときと同じで、生活シーンについてのヒアリングなどはとことんやります。」(山本さん)

ある特定の「暮らし」や「ライフスタイル」の推奨ではなく、ひとりひとりの生活を目を凝らして見つめ、いかに育んでいくことができるのか考えるのが基本的なスタンス。
自分と他人が違うことを楽しんでもらえるよう心がけたヒアリングや製作を行っています。

金属プレートで作った表札。空気や雨に触れ、一つ一つ異なる味わいが出ます。

「一人ひとりの日々に目を凝らすと、必ずその人らしさが潜んでいるものです。一瞬の喜びでも、小さな悩みでも構いません。一緒に生活を形にしてみたいと想う個人や事業者からのオーダーをお待ちしています。」(山本さん)

86400″は今後、区内の事業者、職人さんとの協働を中心とした展開を計画。金属商品をベースに、様々な区内にある専門性・技術力を反映させた商品の開発を通じて「ものづくりの街」荒川をアピールし、23区中もっとも昼間人口の少ない荒川にたくさんの人が訪れる機会をつくれればと考えているとのこと。様々なイベントにおけるワークショップの開催など、区内各所との連携を精力的に開始しています。

区内各所でワークショップなどを実施

「フットワーク軽く区内どこでも行くので、何か一緒に作りたい、というものがあればぜひお声がけください。」

あなたのアイデアも、ぜひ相談してみてはいかがですか?
あっと驚くような、「それそれ!」と愛してしまうような商品が生まれるかもしれませんよ。


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