荒川の職人さん:4人目「堀川鋳金所 松本育祥さん(前編)」

この記事は約2分で読めます。

西日暮里の駅から数分、教えられた住所を訪ねるとガレージの奥から声がする。奥の工房では、先に訪れていた若い夫婦へ松本さん親子が鋳金の作業をレクチャーしていた。

堀川鋳金所では、予約制で鋳込みの体験教室を行っており、箸置きやぐい呑みといった工芸品を自分で作ることができる。松本さんたちの作業場でもある工房に足を踏み入れ、日頃使っている道具をそのまま使わせていただく。素材は混じりっけなしの純錫だ。

職人の世界にこれだけ近い距離で接することはめったにない。見慣れない光景におっかなびっくりの私をよそに、四代目・育祥さんは柔らかい語り口で説明を続ける。三代目・隆一さんはその間に黙々と次の作業の手筈を整える。

箸置きを作るつもりで来たが、先のご夫婦が作られている様子を見て羨ましくなり、ぐい呑みを作らせていただくことにした。

まずは型枠に湿気のある砂を押し固めて「生型」と呼ばれる鋳型を作る。堀川鋳金所で使われる砂はとても滑らかで目が細かい。繊細な芸術品や工芸品の鋳造が多いためだ。鋳型がいびつにならないよう、原型に触れる砂は篩(ふるい)で落とす。

「篩の使い方は料理と同じです」と育祥さん。プロの技には到底及ばないが、そう思うと作業に親しみが湧く。原型が砂に隠れたら、手で砂をたっぷり盛り、後で型が崩れないよう隅からしっかりと押し固める。

上下一対の型ができたら崩れないようにそっと型を合わせて生型が完成する。型を合わせる作業はさすがに自信がなかったので育祥さんにお任せした。笑って引き受けた育祥さんは難なく型を組み合わせていたが、失敗することはないのだろうか。

「失敗したら、まあ砂だし、作り直すだけです」あっさりとした答えが返ってきた。それだけ失敗も多く重ねて今の技を築いてきたのだろう。

生型ができたらいよいよ鋳物の醍醐味、錫を流し込む。純錫は金属の中では融点(個体が融ける温度)が低く、200℃強で融解する。そのため、バーナーを当てているとみるみるうちに形がなくなって液体になっていく。色は銀色だがその姿はまるでチョコレートか何かのようで、金属とは思えず不思議な感じがする。

鉄の鋏で皿を掴み、穴を開けておいた生型にトロトロと注ぎ込む。液体だったはずの錫も砂で冷えてあっという間に固まるので、頃合いを見て型を崩し固まった錫を取り出す。

砂で冷やされたとはいえ、砂から取り出す瞬間はまだ高温。習いたての頃はうっかり触って火傷をしたことも多々あるという。水に浸せばあっという間に触れる温度まで冷える。この熱伝導率の高さが錫の特徴でもある。砂を洗い落とすと錫の光沢があらわになった。

余計な部分を電動ノコギリで切り落とすと、円錐形のぐい呑みがようやく形として見えてくる。ヤスリを掛け、口当たりなど好みの形に調節すると完成だ。

→ 後編へ続く


<取材協力>

  • 社名:有限会社堀川鋳金所
  • 住所:〒116-0013 東京都荒川区西日暮里6-43-8
  • TEL/FAX: 03-3893-1442
  • Email: horikawaimono@gmail.com
  • ホームページ: http://www7b.biglobe.ne.jp/~horikawaimoji/contact.html

※荒川102の取材情報は地図からも探せます。ぜひご活用ください。>>> 「荒川102取材マップ」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です