以前、荒川102で紹介した高齢のマジシャン、「目出鯛寛(めでたい・ひろし)」さん。
新宿で開催される「全国奇術大会」に出場されるとの情報を得て、覗いてみることにしました。
会場は新宿の明治安田生命ホール。高級感漂う300席超のホールにはマジックを愛する人や出演者のファンが集い、開演を今か今かと待っています。
奇術大会へは初出場の目出鯛さん。「95歳のマジシャン」は今大会でも目玉のようで、紹介に会場がざわめきます。期待の視線がステージに集まる中、暗転したステージの裾から目出鯛さんが登場しました。
飄々とした表情で現れ、最初のマジックで出したのはサンタクロースの赤い帽子。ひょいと頭にかぶると、季節外れのサンタクロースは淡々と次のマジックに移ります。
続いて手から飛び出したのは色とりどりの紙テープ。客席から上がる歓声と拍手に思わず目出鯛さんも少し自慢気。
派手な動きをするでもなく、てきぱきと鮮やかなマジックを披露していく目出鯛さん。鳩を出して会場をわっと沸かせたのですが、その後鳩はどこへ消えたのか・・・小さな気掛かりを客席に植えつけつつ(笑)、目出鯛さんのマジックは止まりません。
次に出てきたのはカラフルなミニ傘!出てくる出てくる、10本ぐらい出てきたでしょうか。足元が傘で埋まってもまだ出てきます。隣席のお客様からも「まだ出るの!?」と驚きの声。傘の泉がステージを埋め尽くしたところで、目出鯛さんのステージは盛大な拍手とともに終演しました。
95歳だなんて到底思えないほど見事な手さばき、美しい姿勢、若い感性。どこか余裕と愛嬌を感じさせる表情は「次は何を出てくるのだろう」と見る者を惹きつけます。
「(目出鯛さんが主宰する)マジック道場の生徒も何人か来ていたみたい」と目出鯛さん。堂々たるステージを生徒の方々にも見せられて、安堵とともにどこか満足した表情でした。
「道場もやってますから、興味があったら連絡くださいよ」と名刺を残し、目出鯛さんはステージで見たように飄々と控室へ戻っていきました。
目出鯛寛、不思議な魅力を持つマジシャン。
客席に笑顔が広がるたび、嬉しそうに微笑む姿が印象的でした。次はどんな手段で私たちを笑顔にしてくれるのでしょうか。それが彼の一番のマジックです。