高校生だけど社員です!高校の中にある広告企画会社「株式会社レガロ工房」に行ってきた

荒川区民のみなさんが普段どこかで目にするような、荒川区や商店街のイベントのポスターや、あるいはどこかの施設のホームページ。
実は、それらのいくつかは、高校生が運営する株式会社が納品している、と聞いたら驚きませんか?

都立荒川商業高等学校、通称「荒商」と呼ばれる学校で運営されている、模擬株式会社レガロ工房、という会社がそれです。

レガロ工房のホームページ

レガロ工房は10年前に設立され、今に至るまで様々に取引先を増やし、主にポスターやチラシなどを納品してきました。

制作しているのは、荒商に通う高校生達。
学校の授業や部活をやる傍ら、レガロ工房に参加し、イラストレーターやPhotoshopなどのデザインソフトの勉強をしながら制作を行っています。

高校生とはいえ、納品先は本物の役所であったり、ビジネスの現場。
お金をもらう以上、プロとして、一定以上の品質のものが求められます。
ビジネスの厳しい現実に果敢に挑戦している若者を訪れてきました。

 

1. 都内でも最大規模の就職率を誇る商業高校。


荒川商業は、小台から隅田川を挟んだちょうど対岸、小台橋を超えてすぐのところにあります。
なので、「荒川」という名前を冠していますが、住所は足立区になります。

小台から隅田川の対岸に白い堂々たる校舎を見せる荒川商業高等学校

「荒川商業高校は、5つの系列から成っている学校です。具体的には、デザイン、情報、マーケティング、会計、ビジネスの5つの系列から成り立っています。1年生のうちはバランスよく全ての科目を学んでいくのですが、2年生になったら自分の進みたい道を選択し、3年生にかけて、個別の系列を専門的に学んでいく学校です。」

こう教えてくれたのはレガロ工房副社長の関口さん。
高校生とは思えない、しっかりとした口調で説明してくれます。

左から社員の金児さん、関口さん、担当の野村先生。

「この学校は、入学時から高卒で就職することを意識している学生が多いのが特徴です。1学年200人程度ですが、今年はすでに120人以上が就職に内定していまして、非常に就職しやすい学校です。」(関口さん)

都内随一の就職数を誇る

就職数では都内でも最大規模だという荒商。非常に仕事への意識が高い学生が集まっているんですね。

「イラストレーターやPhotoshopなど、専門的な分野を高校にいる間から学べるので、そこから更に専門学校などに進んでいこうという生徒も中にはいます。割りと本格的なことが出来ます。」(関口さん)

事務系の就職が全体としては多いようですが、すぐに現場で通用するレベルのイラストレーター、Photoshop、InDesignなどを学び、そのままそういったスキルが活かせる会社に行く子も多いそうです。

「入社時は会社側でもスキル面ではあまり期待していなかったりするんですが、実際には即戦力で使えるスキルレベルであることも多く、驚かれることもあります。生徒のほうも、それまではいくら勉強しても一銭にもならなかったのが、突然それでお金をもらうことが出来始めるので、先生すごいね、と感謝してくれます(笑)。」(野村先生)

 

2. 模擬株式会社レガロ工房の設立は10年前


レガロ工房が設立された経緯をお聞きしました。

「以前は、商業高校でも授業の内容について色々な反省があったんです。とにかく就職のため、検定や資格を取ることに集中しすぎていたりとか。実学を学んでいるんだから、自分達が学んだものを、直接的に地域社会などの役に立たせることができないだろうか、ということで、10年ほど前にそういった観点でレガロ工房というものが立ち上がりました。」(野村先生)

レガロ工房の活動場所

都内に商業高校は9校あるそうですが、こういった活動をしているのは3校。10年前に校長先生が資本金を出資する形で始まりました。

教室内に貼ってあるフラッグなども全て生徒が自分達でデザインしており、キャラクターなども制作しているとのことです。

「商店街などの注文を受けまして、チラシやポスターの制作をしている他、ホームページの制作も行っており、最近では保育園のページの制作なども行いました。大判印刷もできるので、そういったところも含めて商店街さんなどに長年使っていただいています。」(野村先生)

レガロ工房自慢の大判印刷機

レガロ工房は会社であり、授業や部活ではありません。「仕事」です。レガロ工房の「社員」は、部活が終わった後にレガロ工房に集まり、自主的に仕事を行います。夜遅くまで残っていることも多いのだとか。地元で実際に仕事をしているプロのクリエイターやカメラマンに来てもらって、どのように仕事が回っているのかについてリアルな話しをしてもらうこともあるそうです。

「実際にお金をもらって仕事をしている人たちの話しなので、聞いていて面白いです。自分が日ごろやっていることの裏側の話しなんかもしてもらえたりするので、とても勉強になります。」(関口さん)

全ての仕事に対し、レガロ工房社員によるコンペが行われます。
コンペで選ばれるのは1作品。発注主によるシビアな選定が行われます。
コンペに応募する側の社員もみな真剣。熱量を投下しても落選してしまうことも当然あります。

毎回厳正なコンペが行われます。創っても採用されるわけではない厳しい世界。

「コンペで全然作品が選ばれない子もいたりします。そうするとこちらは申し訳ないな、、、という気にもなりますが、それも仕事の現実ということで考えています。ある程度の実戦に通用するスキルを身につけてもらうため、週10時間ぐらいPhotoshopとイラストレーターしかしないとか、敢えて割りと偏った教え方をしています。」(野村先生)

 





3. 「レガロ」は、イタリア語で「贈り物」の意味


設立時から地域貢献を目標として掲げているレガロ工房。

「レガロは、イタリア語で「贈り物」という意味でして、地域貢献したいという意味を込めているんです。地域と交流しよう、地域を活性化しよう、社会貢献しよう、という3つのテーマを重視した活動をしています。生徒の作品ということであまり期待していない部分もあると思うんですが、そういう人たちを驚かせるような制作物を納品していこう、という気概で活動しています。」(関口さん)

会社のテーマは地域活性化

現在の担当の野村先生は三代目。担当になった当初は自身もイラストレーターなどの使い方は一切知らなかったと言います。

「イラストレーターやPhotoshopは全く知らなかったので、生徒と一緒に学んでました。講師として市民講師の経験者の方をたくさん呼んでいるので、その方々から学んでいます。レガロ工房は部活ではなく、社長は私が2年生あたりから一本釣りします。活動をするのは3年生のときだけなのですが、社長候補に直接話しをしてやる気になってもらい、その子が回りの目ぼしいメンバーに声をかけてくれる、という感じで参加者を広げています。」(野村先生)

最近は、始めてウェブサイトも納品しました。

「三ノ輪のなかよし保育園のサイトを立ち上げさせてもらいました。夏前に制作を初めて、つい最近サイトを公開しました。メンテナンスも担当しています。」(関口さん)

レガロ工房に制作物などを頼みたい場合は、サイトから問い合わせればどなたでも相談できます。
会社の性格上、地域貢献につながるかどうかという観点を重視しているとのことです。

 

4. ビジネスの洗礼を受けながら成長


仕事をする上では厳しいことを言われることもあるそうです。

「高校生が創るということで甘えてしまうと、その甘えが作品に出てきてしまい、指摘されることがあります。」(関口さん)

キャラクター制作も行います

逆に、弱みを克服する経験も。

「高校生ということで大した仕事は出来ないんじゃないか、と感じていらっしゃるような雰囲気を感じることもあります。そういう時には、思いを伝えて、コミュニケーションをとることで、相手にも理解していただくようにしています。」(金児さん)

企画の打ち合わせも真剣。

高校生からそんな体験ができるのはとても貴重ですね。即戦力になる学生がこの学校から多く卒業していくのも分かる気がしました。

「レガロ工房に入ることで普段できない経験ができて、仕事に対するイメージとか、世界観が変わったんです。もっと積極的に仕事で貢献していきたいという気持ちで今はいっぱいです。」(金児さん)

 

関口さんによる自主制作動画。あらすじから全て関口さんが演出、制作。

「足立区の企画だったんで、自分達高校生から見て楽しい場所、高校生から見た足立区、というものを入れることを気にしました。」(関口さん)

金児さんが作った架空のケーキ屋さんのチラシ作品。

「気軽に来れる雰囲気をチラシで表現したいという思いを込めて制作しました。」(金児さん)

現在、レガロ工房では、クラウドファンディングに挑戦中。
北海道夕張市の財政破綻に対して高校生が何をできるか、というコンテストに応募し、優秀賞を受賞した企画を実際に実現しようと奮闘しています。
良かったら応援してあげてください。

※画像をクリックすると応援サイトに飛びます。

高校生ながらプロ意識をもって仕事に取り組んでいるレガロ工房。
インタビュー中も、一つ一つの質問に対して真剣に、しっかりと言葉を選びながら回答しようとする姿勢がとても印象的でした。

チラシやサイト制作でお困りの方は、若者の力、アイデアを借りてみるのもいいかもしれませんね!
ぜひご検討ください。


<企業情報>

  • 社名:模擬株式会社レガロ工房
  • 所属:荒川商業高等学校
  • 住所:足立区小台2-1-31
  • 連絡先:03-3912-9251
  • HP:会社サイト

※荒川102の取材情報は地図からも探せます。ぜひご活用ください。>>> 「荒川102取材マップ」


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