脳卒中を機に、広くて緑も多い荒川区へ!
1年半前、谷根千地区にあった路地裏の自宅で仕事中に、脳出血の発作を起こして救急病院に運ばれました。日本人にはすごく多い脳卒中(脳出血と脳梗塞)ですが、もっとずっとお年寄りの病気で、50代の自分にはまだ無縁と思い込んでいたのですが、実は更年期を乗り切った頃の女性は発作を起こしやすいのだそうです。
負けん気が強い私は救急病院の病室の天井を眺めながら、寝たきりになってもくじけずに生きていこうなんて思っていたのですが、不幸中の幸いで、左半身麻痺以外失語症も失明もなく、症状も落ち着いたのでリハビリ専門病院に転院することになりました。
家から近いところが良いよねと家族で話して、荒川区の病院に決めました。
入院してリハビリを続けて、ときどき車椅子を押してもらって外にも出られるようになりまして、まず空が広くていいなあ、川があって良いなあと思いました。谷根千は台地に挟まれているので、「坂下」で路地裏にあった我が家は、空が狭かったのです。
荒川区に来てみると、「ああ、晴れ晴れするなあ」と思いました。広い公園も多いし、案外と緑も多い。荒川はお隣の区だったけど、こういうところもあったとは知らなかったなぁと考えてた頃、家族から、身体が不自由になったお母さんと暮らすにはマンションの方が良いと思うんだけど、と相談を受けました。
路地裏の家も好きだったけど、荒川の空の広さと隅田川の流れを見たら、広いところで暮らしたいと思うようになっていたので、それがいいね、と答えました。結局、病院の近くの南千住の再開発地区にマンションを探すとことにして、私は荒川区民になったのでした。
電動車椅子、愛車「ウィーン君」を手に入れる!
退院したときにはがんばって歩けるようになる気で満々だったのですが、いざ歩いてみると、普通の人が10分ぐらいの距離でも30分ぐらいかかるし、風が吹いただけで転びそうになるし、とはいえ、右半身は普通に元気な人なので、行きたいところもあるし、友達にも会いたいし。また、日常的に車椅子を使うようになってしまったら、歩けなくなるかもとためらう気持ちもありました。
右手だけでは車椅子を動かすのは何かと難しく、いちいち家族に付き添いを頼まなくてはいけないのは気が重いなあと思うようになりまして、だんだんと外出がおっくうになってきました。そんなときに、町で電動車椅子を使っていらっしゃる方を見かけたのです。
バリアフリーな再開発地域ということもあり、車椅子の方も多いのですが、電動車椅子の方が友人らしい方と並んで話をしながら町を行く様子がとても自然で魅力的でした。とはいえ、楽をしたらリハビリが進まないのではないか、などとかなり悩みましたが、「やっぱりあれがいいなあ」と思い、ケアマネージャーさんに相談して、電動車椅子を入手しました。
バリアフリーな再開発地区は車椅子生活者にも優しい、とっても住みやすい町なんですよ
私の電動車椅子は車輪にモーターが着いている軽量型というタイプで(それでも30㎏ぐらいありますが)、そのままバスにも電車にも乗せてもらえます。小型のバッテリーを家で充電すれば一日分の外出は問題なく走ります。これでもヤマハの最新型なので、色々な方から「すごいね」って言ってもらえます。特に男性は目が輝く方が多く、私より人気者になってしまうこともあります
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不自由なことが多いでしょう、と心配して下さる方も多いのですが、新しい地元はバリアフリーな町で、美容院も車椅子オッケー、買い物の時も「荷物は車椅子の後ろにかけましょうか?」と言ってもらえて、とても暮らしやすいです。
区内もバスであちこち行けるし、荒川区は坂が無くて、とてもいいなあと思っています。この辺の実際はまたおいおいご紹介していきます。
都電荒川線は補助なしでどこでも行けちゃうのだ
車椅子で電車やバスを利用するときは、駅員さんに渡し板を使った乗降補助をお願いします。乗せていただいて、降りる駅にも連絡してもらい、着いたら降ろしてもらいます。エレベーターが都合良くある駅ばかりではないので、乗り換えの時にもずっと案内してくださいます。古い駅だと階段の上をリフトで移動することも多いです。エスカルというこのリフトは「ぴー、ぴー」と音を出しながらゆっくり動き、その時にも脇を駅員さんが一緒に歩いてくださいます。ありがたいんだけど、注目も集めるし、ちょっと恥ずかしいなと感じちゃいます。
最新型の大江戸線はこうした補助なしで利用できるのが分かったときは、ほっとしまして、今まで嫌いだった大江戸線がすごく好きになったのですが、ある日、都電荒川線も補助なしで使えることがわかりました。これは嬉しかった。出かける前には時間をかけて下調べをして、頭をひねっていろいろルートを考えるのですが、都電で行ける場所だと「行く!都電で行けるから!」と飛びついちゃいます。荒川区はとことん車椅子向きなのかも。
もちろんリハビリも続けていて、最近は階段が上れるようになって、諦めていたお店にも行けるようになったんですよ。いつか車椅子から卒業する日を目指しています。それまではウィーン君と一緒にあちこち探検しようと思います。
車椅子から見た、ちょっと新鮮な荒川区を伝えていきます
車椅子は大きくてかさばるイメージがありますが、だいたいベビーカーと同じです。押してくれる娘や友達がママさんで、私が子ども。立場が逆だけど、久しぶりにママさんたちの仲間になった気分です。地面に近いので、草や土の臭いにはっとすることも多いです。
きっと、車椅子から見た荒川区は、ママさんたちの役にも立つんじゃないかな?
転びやすいお年寄りも、車椅子に乗せて外へ連れて行ってあげてくださいね。