荒川十色 「白」undōの石油ストーブと熱燗

いつも下北沢で落ち合う友人を連れ出して、荒川区をぶらぶらした。三ノ輪の「undō」に行きたい、と友人が言ったからだ。

undōは大関横丁のすぐそばにある小さな白い…部屋、とでも言おうか。カフェであり、ギャラリーであり、バーであり、イベントスペースでもあるこの空間は、あまりにも自由でうまく言い表せる言葉がない。

変幻自在でありながら、何かにかたよる気配もない。壁一面に塗りたくった白いペンキの色が、まさに「undō」を表すにふさわしいと感じる。

日が傾きかけた部屋の真ん中に、部屋と同じ真っ白い石油ストーブが佇んでいた。「点けますか?寒いですよね」と店主がこなれた手つきで火を入れてくれた。

よく見ると、ところどころに茶色い焦げが付いている。白いストーブだからなおさら焦げが目につく。「常連さんたちがここでお燗をするんですよ。最初はいいんだけど酔っ払ってくるからだんだんこぼしちゃって(笑)」日本酒は糖分があるから焦げるのだな、などと妙な感心をする。

友人が店主とコーヒーの話に花を咲かせる間、私はストーブを眺めて想像していた。ストーブの周りにいい大人が膝を突き合わせる様子を。店主と同世代の若者か、昔から住むおじさんか。燗がつくのを今か今かと待つ間、何を話すのだろう。酒が入るまでは寡黙を貫き、酔いとともに饒舌になるのか。

いずれにせよ、ストーブを囲んで飲む熱燗は格別に違いない。五臓六腑を駆け巡る熱さを想像していた。

明治通りに夕方のチャイムが響く。もう少しでこの辺りも暗くなるだろう。次に来るときはきっと熱燗を頼もう。熱燗を頼んで、膝を突き合わせるお仲間に入れていただきたい、この白いストーブに焦げ目をつけて照れ笑いをしてみたい。手作りのレモネードをすすりながら、日が落ちるのを待った。

<スポット情報>

お店の名前 undō 運動
場所 〒116-0014 荒川区東日暮里1-5-9
営業時間 12:00〜23:00
定休日 木曜日
ホームページ http://minowa-undo.tumblr.com/

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