西日暮里を舞台に、障がい者支援事業者としての新しいあり方に挑戦している「作業所スカイ」さん。
後編となる今回は、どのように障がい者の方と一緒に事業を立ち上げていっているのか、その挑戦の中身についてお届けします(作業所の歴史、開設までの経緯などについては前編を御覧ください)。
– どのようにしてサービスの範囲を増やしていらっしゃるのですか?
仕事については、普通に各企業さんなどに営業を行っていまして、我々が出来る範囲のことで仕事を請けているのですが、時には、経験のないことにチャレンジすることもあります。やはり、リピートで使っていただいている会社が20社程度ありますので、そういったところから要望をいただくことが多いですね。
例えば先日製本の仕事を荒川区からお仕事の話しがあり、では取り敢えずやってみます、ということで請けてみました。製本業の登録もしましたが、製本をしたことがなかったので、さあどうしようかと。
以前の勤め先の関係でいろいろ機械を扱っているとことがあってのでそこに相談してみたところ、製本の機械があるという話しになり、操作も難しくないということだったのですが、お値段がなかなかしたものですからすぐ購入するというわけにもいかず、2週間だけデモ機として貸していただく、という形を取ることで貸していただき、操作方法のレクチャーを受けてなんとか納品までこぎつけたようなこともございました。
それ以外にも内職の仕事というのは本当に様々なものがありまして、例えばあるフィギュアの商品をリメークして別の商品にしたいという問い合わせをいただきまして、やったことがありませんでしたが、試しにやってみようかということでいろいろ試行錯誤してサンプル品をお届けしました。
そうしましたら、それで商品としていけるということになりまして、仕事になったようなものもございます。兎に角なんでもチャレンジですね。
– 新しい地域で顧客企業を増やしていくのは大変だったのではないでしょうか?
ここが出来たのは平成25年で4年目なのですが、最初からこういった形態で事業を展開していたわけではありません。
A型事業者はある程度安定収入がないと運営が難しいところがあり、どこかの会社の純粋な下請け会社として運営されている場合や、昔であれば東京都の仕事などで成り立っていた場合が殆どなんです。
ただ、我々のような小規模な事業所になるとそういった仕事を取ることもできないので、自分たちなりのやり方でこの地域にあったやり方を追究していく中で内職型の仕事を集中して請けていくというスタイルができあがってきました。また、そうすることでB型さんとの連携もできるようになりました。
我々の事業方針の一つに「A型事業者の特性を活かして区内の障がい者の支援事務所と一般企業をつなぐ役割を担い、地域企業のニーズを満たす」というものがあります。
福祉の作業所といえばすごく安い賃金でサービスを提供するというところが一般企業さんにとっては魅力だった時代もあるのですが、今は見合う単価で仕事を募集しますし我々も見積もりも出します。そういった中で価値を見つけてくださってお仕事をさせて頂いている企業さんとおつきあいが出来ているのかなと思っています。
どうしてもこの業界は仕事を「もらう」という感覚が強いのですが、我々は仕事とはあくまでもニーズにあった相手を選んで目的を達成するものだと思っていますので、我々が単なる「安い下請け」という存在ではありたくないと思っています。そうでないとどうしても給料も払えなくなりますし。
どのような仕事でも同じですが、変なものを納品すればすぐに信頼されなくなるわけで、より品質を高める努力をしておりまして、その中身を体現しているのが彼ら障がい者なわけですね。ですから、彼らのやる仕事が安いというわけではなく、その仕事の中身に応じた単価、収入というものを間にいる我々がきちんと担保することがサービスとなるのかなと、そういうわけなのかなと。
実はこういった作業所を利用するお客さまは、我々のような事業所が安いサービスを提供するものだというものはご存知なんです。ですので、我々に委託せずに他の福祉施設に出せばもっと安上がりに済ませることもできるんです。
そんな中で我々にリピートで仕事をいただいているということは、何らかの我々の価値がそこにあるからだと考えていまして、逆にそれに応えられるよう、我々も日々努力を怠らないようにしないといけません。
– 自社商品で勝負するというのも既成概念を覆すような刺激的なチャレンジですね。
いままでの「下請け」という発想を壊したいということも考えているんです。例えば一般企業さんが我々のお客さんになる、という事例も作っていきたいと思っています。
「あら坊タオル」はその一つの例でして、あれはうちが企画して、いつもお付き合いいただいているお客さまの企業様に逆に発注させていただいているんですね。
そういった関係を少しずつ築いていくところに挑戦しています。こういったことをやりながら、我々自身もこの事業がやれる領域がまだまだあることを実感しています。
– 区内の障がい者対策等についてはどのように感じられていますか?
例えば、これは他の地域でも同じですが、重度支援の方はなかなかうまく出来ていない部分です。
訪問看護のような医療と福祉の連携ですとか、そういうことについては予算の問題もあって、一人ひとりが求めているニーズに対してどれだけのサービスが提供できるかというのは、軸になる人たちの発想と努力に依存する部分があります。
我々が運営しているスクラムあらかわではいくつもの事業を展開しているのですが、特に障がい者の共同生活援助に関しては3年間入所できるグループホームで地域で暮らすための生活訓練を受けることが出来るのですが、こういった通過型の施設は都内にはなかなかありません。
もうどこにも入所施設は作りませんよという中で、重度障がいの方が行く場所が無い現状に対して、そういう方が地域で暮らすための生活の基礎を学んだり、次の住まう場所を準備したりと、そういった趣旨で行っています。このあたりの施策については、荒川区も頑張っているところだと思っています。
– 区内の企業だとどういう企業による利用が多いんでしょうか?
まずはDM事業者や型抜きやさんなど、紙関係です。それから鉛筆メーカーさん、販促品事業者様などによるご利用が多いです。そういったところでの封入、検品、シール貼り、といったような作業になります。
できるだけ荒川区に根を張っていきたい、という思いもございますので、荒川区、または車で30分程度で行ける範囲の近隣地域には営業を行っております。他には、本や文房具のフェアなんかに行って営業をかけることもございます。
– 今後の事業展開について教えてください。
現在利用者と職員合わせ常時13名で仕事をしていますが、生産性という意味でいうとたかだか13名しかいないということも感じています。ですので、これから柱となる事業をいくつか準備していきたいと考えておりまして、その中で一つ考えているのは清掃事業です。
清掃事業は比較的参入しやすく初期投資がそれほど要らないという部分もありますが、もう一つは、企業における一般就労として多いのが比較的清掃業務での受け入れが多いという実情もあります。
ですので、我々が清掃事業を展開することによって利用者の方が当社で業務経験を積み、ここを出た後の次の勤務先の選択肢が広がるようにしたいということもございます。
– 現状の一番の課題は何でしょうか?
我々が一番困っているのは実は販路の確保です。
私どもはあまり自社商品というものを持っていなくて、今回始めて自分たちであら坊タオルという商品を作ったわけですが、それ以外のB型事業所さんでは、魅力的な商品を沢山お持ちだったりします。
ただ、それをどうやって売っていいのかが分からないので、有志で集まってそれをどうやったら収益につなげられるかということを夜な夜な集まって話し合ったりしています。
自分たちでイベントなどを企画して推進していくような経験もないので、例えばバザーであったり、荒川区の祭りぐらいしか販路が無いのが現状です。私個人的には自分たちで企画をしてどんどん外に行くことにチャレンジしていきたいと考えています。
– 最後に一言どうぞ
実は、私達は、サービス提供において特に障がいというキーワードは前面に出していないんです。どういうことかと言うと、我々は障がい福祉施設だから仕事を欲しい、ということではなくて、ちゃんと価値を提供したいというように考えています。
障がい者だからそれなりの品質と安さ、ということではなく、誰が作っても、良いモノは良いと思ってます。そういうことを共有していただける企業さんと、長くお付き合いできる関係を作っていきたいと思っています。
検品、シール張り、DM封入、印刷製本など、無料で見積りますのでぜひ、お問い合わせください。
お問い合わせ先
- 名称:作業所スカイ(社会福祉法人すかい)
- 住所:荒川区 西日暮里 5-5-20 サンリバー日暮里102号
- TEL:03-3891-7060
- FAX:03-504-5520
- 受付時間:月〜金 9時〜5時
- メール:sagyou-arkw@sukai.jp
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