下町企業訪問記#2 – 金網一筋95年。世界初の金属折り紙「ORIAMI」を展開する石川金網(新三河島)

三河島と町屋の中間点に位置する交通の要所、宮地ロータリー。

その交差点すぐのところに本社を構えるメーカー「石川金網」は、世界初の金網で出来た折り紙「ORIAMI」など、様々な顧客ニーズに対応する中で培った開発力・技術力を活用したユニークな自社商品も展開する金網屋さんです。

宮地ロータリーすぐにある石川金網

金網と聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか?家庭用品で言えば篩(ふるい)ぐらいでしょうか?
実は様々な用途に使われ、産業やサービス業を黒子として現場で支えている金網。
展示会で見た「ORIAMI」から関心が湧き、オフィスを訪ねてきました。

企画開発部の仲さん(左)、営業の柳田さん(右)にご対応いただきました。

 

1. 金網一筋に、創業95年!独自の開発力と対応力で全国の顧客から信頼を得る金網専業メーカー。


石川金網の創業は1922年。戦前より一貫して、三河島を本社として金網に特化した事業を行っている企業です。
戦前は軍関係の仕事などを行っていましたが、戦後は産業分野での金網商品に転換し、様々な製品を展開。
専業金網メーカーとして95年の歴史を歩んできました。

石川幸男社長

「関東大震災、東京大空襲、バブル崩壊、リーマンショックなど様々な試練がありましたが、時代の変化に対応する開発力を磨くことで、金網用スリッター、金網用自動裁断機などを他社に先駆け開発し、大量生産の要望に応えて今にいたります。また、大型篩、超音波振動篩などの金網の張替ニーズに対しては、様々なお客様からの少量多品種での需要に応えられる対応力を磨いてきました。こういった部分はすべてハンドワークであり、弊社の金網職人の技術が生かされています。」

オフィスにはさまざまな金網製品が展示されていました。
中には「あ、見たことがある!」という製品や「そういえばこれも金網か!」と改めて再認識させられるようなものまで様々な金網の世界が。

コンビニやファーストフード店でよく見るフライヤーが!

 

マイクのヘッドに使われているのも金網だった!

「樹脂押出機用のメッシュについては日本最大の在庫量を保有しています。押出機用メッシュ生産金型は1ミリ刻みに500型以上保有しており、少量多品種から大量生産まで対応可能です。国内外に多数の協力工場があり、自社工場との連携で顧客のニーズに素早く対応することで多くの顧客より信頼を得ています。」

メーカーの生産工程などでゴミなどを除去するフィルター用途などに使われているんですね。

石川金網の社員は現在約30名。㈱日本製鋼所、日立金属㈱、信越化学工業㈱など、国内外の約900社と取引があるということです。

お客様からの厚い信頼が伺えます。

 





2. 世界初の金網による折り紙「ORIAMI」を開発


先日開催された「モノづくり技あり市」でも一際ユニークな存在感を放っていたのが石川金網の「ORIAMI(おりあみ)」。

石川金網さんの展示

ミクロンサイズの金属繊維で織られている金網を、折り紙の素材として一般の方でも扱えるようにした世界初の商品です。
ホームページでは、職人さんの遊び心で作ってみたのが最初のスタートだったと記載されています。

「これが最初に試作されたものです。」と見せていただいたのは大きな折り鶴。

第一号の折り鶴。ここからORIAMIへと発展していきました。

「最初に作ったもので、殆ど外に展示することもありません。見ていただいてのとおり、初期のものは金網の繊維も太く、今のORIAMIよりもごわごわしているのが分かるかと思います。」

こちらが現在のORIAMI。柔らかさも加工しやすさもまるで違います。

現在販売されているORIAMIに至るまでに、商品化にあたって、一般の方でも折り紙としての安全に扱えるように研究を重ねたことが窺えます。

企画開発チームに所属し、ORIAMIの折り紙創作も担当している仲さん。産業用システムのソフトウェア開発者で、石川金網では機械の制御用ソフトの検査などを担当されています。

実は折り紙が大好きで、自分でも創作折り紙を作っていた仲さん。ORIAMIも以前ホビーショーで見たことはあったのですが、石川金網に面談に来るまでは、ORIAMI事業を展開している会社だとは知らず、面接で知って縁を感じて入社されたと言います。

「それを知ったときには驚きました(笑)。今でもソフトウェアの仕事もしていますが、新規事業としてのORIAMI事業の立ち上げも大きなミッションになっています。そのために自社でオリジナル設計した創作折り紙の開発なども行っています。」

Amazonやヨドバシカメラでも販売しているというORIAMIですが、事業としてはどうなのでしょう。

「産業向け事業は主力事業として今後も柱になりますが、自社の技術力や発想力のPRも含め、ORIAMIという商品の認知を高めていくことは会社としても大きな戦略になっています。今後も新しい色のORIAMIの開発や、ORIAMIを活用した商品ニーズの発掘などを行っていく方針です。」

実は折り紙の世界にも知的財産権があり、創作折り紙については著作権を持つ折り紙作家の許可がなければ勝手にその設計と同じ折り紙を作って事業目的などで企業ホームページに掲載することなどはできないそうです。石川金網オリジナルの折り紙作品の開発も手がけている仲さん、どのようにして折り紙の設計を行うのでしょう。

「このバラは生まれて初めて自分で設計をしたもので、8月に日本折紙協会でオリジナルであるという認定を受け「石川ローズ」として登録されました。折り紙を趣味ではやってきましたが、まさか仕事で自分が創作折り紙を設計することになるとは思いませんでした。」

 

オリジナルの「石川ローズ」

金属の金網で作られているORIAMI、作品を制作する側から見るとORIAMIは折りやすいんでしょうか。

「はい。昔これが無いときは金銀などのホイール折り紙を愛用していました。金属の特性として折ったらそのまま形状を覚えこんでくれるので、設計したものを実際に折るとどうなるかということが確認しやすいのですが、紙ですと折り重なっていくと膨らんできたり、形状を保持することが困難になります。したがって複雑な作品になると金属製のORIAMIは非常に向いています。」

有名な折り紙作家の前川淳さんの作品をORIAMIで作ったものです、と見せていただいたのがこちらの作品。制作には1時間半ほどかかったそうです。

右が「悪魔」。

「前川さんは、折り紙界に初めて”設計”という概念を持ち込んだ方です。この作品でいうと手に5本の指があります。この5本指がどういう構造になっているかということから逆算していき、紙の重なり具合や折れ方などを突き詰めていきます。それら一つ一つの構成物を「原子」と呼ぶのですが、この原子の組み合わせによって設計図を描くのです。」。。。

仲さんの説明を聞いても、頭の中でどのように紙の展開図などが作成されていくのか、なかなか想像ができず、目の前にあるデビルが一枚の紙から作られているということも理解できません。気になる方は前川淳さんの著作などを読んでみるのもいいかもしれません。(ビバ!おりがみ

「これは一般の方が折ることはかなり難しい作品ですが、それをこれだけの小ささで折ることが出来たのも、ORIAMIだから出来たという部分があります。」

ORIAMIの特性を活かして出来た一つの作品例ですね。
その他、金属ならではの「錆び」を活かした作品も見せていただきました。

錆びを活かした、兜

紙の折り紙とはまた違う風合いが渋い味わいです。
作成してから時間とともに別の味わいを見せてくれるというのもORIAMIの特徴なんですね。

 

3. 新製品「KANAORI」で新しい用途開発にも挑戦中。


ORIAMIに続き、石川金網があらたに市場投入を行っているものが新製品「KANAORI」。

KANAORI

「異素材の金属を組み合わせた新しい金網です。様々な組み合わせがあるのですが、ひとつ例であげますと縦線をステンレス、横線を真鍮といった組み合わせで織りあげるものがあります。また、通常のステンレスをカラーに染めてカラフルな色の金網を織ることもできます。」

KANAORIは特許も取得、金網ですが細い金属線を使用して織られており、そのしなやかな感触を活かした用途開発を行っています。

「室内装飾、パーテーションや、透過性があるので間仕切りなどに活用できます。異素材の縦線と横線を使用するにあたり、それぞれの強度が違うのでテンションコントロールが難しいです。長年の金網の職人の技術で織られています。」

金属なのに布のような触感をもち、様々なカラーリングが可能なKANAORI。「こんな用途に使えないか?」といったアイデアをお持ちの方、石川金網さんに商品開発を相談してみるのも良いかもしれませんね。

 

インタビューの終わりに、社員の方に社長さんのお人柄を聞いてみました。

「えっ、答えにくい〜!でも、いい人?ですよね」
「そうね〜、いい人ですよ(笑)!」

社員の皆さんの雰囲気は明るく、社員と社長の距離も近い、風通しの良い社風であることが会話から伺えました。遊び心もあるユニークな自社ブランド製品の発信にも積極的に取り組みはじめた石川金網さんの原動力はそこにあるのかもしれません。

ORIAMIにKANAORI、これからも荒川区から世界に、あっと驚く製品を出していっていただきたいですね。

 

なお、石川金網さんでは、2018年より、ORIAMIの体験教室を本社で開催していく予定です。

「多くの方にORIAMIの楽しさを体験していただきたいと思います。」(石川社長)

金網で折る折り紙。
どんなものか気になった方は、ぜひ石川金網さんに問い合わせてみてくださいね。

オフィス入り口にはORIAMIで作った作品がずらり。

 

<12月のイベント出展情報>


オリンピック・パラリンピック等経済界協議会が主催する「カウントダウンショーケース」に参加します。

日時:2017年12月25日(月)10:00~17:00 VIP向け、26日(火)10:00~14:00 一般向け
場所:ライジング・スクエア(三井住友銀行本店東館1Fおよび3F)


<企業情報>

※荒川102の取材情報は地図からも探せます。ぜひご活用ください。>>> 「荒川102取材マップ」


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