12月10日、まだ本格的な冬の寒さを感じる前の土曜日。
日暮里のひぐらし小学校前にある西日暮里ふれあい館に、お昼ごはんを食べた後の子どもたちが集まってきました。
この日は、荒川102で企画した「取材体験イベント」の日。
集まってきた子どもたちに記者になってもらい、取材記事作りをしてもらいます。
講師に来てもらったのは文京区で地域マガジンを主宰する及川敬子さん。
及川さんは朝日新聞で20年以上、生活・暮らし報道の記者として活躍された本物の記者さんです。
集まった子どもたちは、これから何が始まるのだろうと興味津々、、と言いたいところですがそこはまだ小学生。ワイワイガヤガヤと思い思いにおしゃべりをしています(^^;
「そろそろ始めますよ~」
ホワイトボードに落書きをしていた子どもたちを席に戻し、まずは及川さんに新聞とは何か?を、実際の新聞を見ながら説明していただきます。
「これは社説と言います。この新聞社が考えてることを書いている場所ですね。」
「ここにあるのはインタビュー。これは人に質問して回答をもらった内容なんかを書きます。」
「この辺はイベントの特集記事だったり、スポーツのお話ですね。」
「みんな、学校で壁新聞とか作ったことはない?」
「かべしんぶん~?社会科見学をしたあとになんか書いたことはある!」
「そうそう、そういうものも、新聞と言いますね」
新聞の全体構成、記事の枠組み、書き方、新聞と日記の違いなど、記者としての心がけなど、一通り基本的なことを説明してもらった後、新聞作りの実践に入っていきます。
「記事には、へぇ~、ということや、なるほど~、ということが詰まってます。」
「記事を書く人は、なぜ?どうして?なんだろうなんだろう、知りたい知りたい、という気持ちを持って取材することが一番大事なんですよ」
今回子どもたちが取材するのは、日暮里にある畳屋さん、戸恒畳店です。
2チームに分かれて、さっそく取材用の質問を考え始めます。
日ごろ家で見慣れている畳でも、それについて考えることのなかった子どもたち。
上手に質問を考えられるかな?と思っていたけど、お父さんお母さんにも手伝ってもらいつつ、自由な発想でどんどん質問を考えていきます。
チームで20個質問を考える、というノルマは20分程度の作業であっという間に達成してしまいました。
それぞれのチームの中で質問が重複しないようにお互いの質問内容を確認し、メモ帳を持っていよいよ取材に出発です。
畳屋さんまでは歩いて3分ほどの距離。
普段通っている学校からすぐのところにある畳屋さんでも、その中を覗いたことはなかった子どもたち。
見たことのない作業場の風景や、珍しい機械、並べられている畳の素材などに早速目を奪われます。
子どもたちは2班に分かれ、一つの班は質問をしながら、一つの班は写真を撮る、という形で取材は進行しました。
子どもたち、初めての取材にも臆することなく、用意した質問を次から次へと戸恒さんにぶつけていきます。
「畳はいつからあるんですか?」
「一年に何枚ぐらい畳を作るんですか?」
「戸恒さんは何代目なんですか?」
「一日で何枚の畳を作れるんですか?」
「畳1枚はどれくらい重いんですか?」
「畳1枚を作るのにどれくらいの時間がかかるんですか?」
「畳はリサイクルできるんですか?」
「うまく出来たなーって思うときはどういう時なんですか?」
「修行は何年したんですか?」
子どもたちの質問攻めにタジタジとなりながらも、戸恒さんも一生懸命答えてくれます。
カメラやスマホを駆使して写真もどんどん撮ります。
普段自由に使ったことがないスマホで写真を撮影することだけでも子どもたちにとっては新しい体験。
どうやったら綺麗に撮れるかなーと、大人に言われるわけでもなく、自分で工夫しながら撮影する姿が印象的です。
取材時間に用意した1時間はあっという間に終わりました。
取材をするほどに興味が湧いてもっと質問したそうだった子ども達ですが、ふれあい館に戻り、今度はインタビューした内容を新聞にまとめていく作業です。
今回は、4つ切り画用紙をつかって記事の構成を作り、取材した内容や、撮影した写真を子どもたちが自ら貼っていきました。
取材するのも大変だけど、取材してきた情報をわかりやすい記事にしていくのはとっても大変。
最初は全体の構成を考えるだけでもなかなか意見がまとまりません。
終了時間が迫り、大人たちもハラハラドキドキして見守る中、悪戦苦闘しながらも、子どもたちなりに趣向を凝らした2つの画用紙記事が1時間ほどで完成しました。
色彩豊かで、とってもいい取材記事ですね。
純粋な疑問や興味がそのまま記事に表れていて、「知りたい」という気持ち、「できるだけ伝えたい」という気持ちに素直に向き合ってくれたことが紙面から伝わります。
「私の家にもたたみの部屋があります。たたみの部屋でごろんとすると少しおちつくかんじがします。だから戸恒さんにはたたみしょく人の仕事をがんばってほしいです」(都筑記者)
畳新聞さんの社説にはこんな記事が載っていました。こんな気持ちの優しい社説、その辺のちゃんとした新聞でもなかなか見たことないなぁ。畳屋さん、頑張って!
最後は、完成した記事を持ってパチリ。
戸恒畳店さんが用意してくれた畳の端切れをお土産に持って帰って、17時に漸く解散となりました。
子どもたち、楽しんでくれたかな?
今回の経験を通じて少しでも身近な町のこと、いつも何気なく使っているものも誰かがどこかで作ってくれていること、世の中にはいろいろな職業があること、そんなことに興味を持ってくれるきっかけになったならいいなと思いました。
荒川102で、またこういう企画が出来たらいいなと思います。
<取材協力>
戸恒畳店
荒川区西日暮里2-9-1
HP:https://totsune.jimdo.com/
Facebook:https://www.facebook.com/totsunetatami/
<今回取材した子ども記者>
金井俐穂
一色夏実
佐藤佳乃
鹿野高生
都筑奈央
鈴木淳太
<講師プロフィール>
及川敬子
文京区子ども・子育て・まち情報JIBUN主宰。元朝日新聞記者。一般社団法人まちのLDK代表理事。
1991年に朝日新聞入社後、20年以上生活・暮らし報道に携わり、妊娠・出産から子ども支援、子育て支援全般を取材(筆名は森川敬子)。2008年保育士資格取得。2014年に退社してフリー。地域メディア活動でまちの人的・物的資源を掘り起こしつつ、2015年から文京区小石川で空きスペースを活用した、子どもがつどうまちのLDK「さきちゃんち」運営委員として、子ども向け、家族向けの講座やイベントを開催している。2016年4月から東東京まちメディア会議所主催の「まち記者講座」講師を務める。
※及川さんが運営される「JIBUN」でも、今回のイベントのことを掲載していただきました! > 【JIBUNテレビ】荒川102主催で子どもたちが畳店を取材し新聞づくりに挑戦!
(今回のイベントは、荒川区の「親育ち支援事業」補助金を一部活用し、実施しています。)