まだ夏の余韻がまっさかりだった9月ごろ、荒川区のあちこちの掲示板に「アラカワ・アフリカ4」と書かれたチラシが貼られていました。
「ん?荒川とアフリカ?どう関係あるんだろう?これは気になる。ぜひ話しを聞いてみたい!」
まだ、創刊したばかりの出来立てホヤホヤだった「ARAKAWA102」の名前を使って、思いきって「取材したいんですけど?」とチラシに書かれていた電話番号に電話をしてみたら、心地良く、 「明日来てください」とのこと。
「え?そんなに早く?」
まだ取材をする心の準備が整ってないよ〜、と思いつつ(笑)、さっそく次の日の夕方に、東尾久のギャラリー「OGU MAG」までママチャリを走らせたのでした。
インタビューには、アラカワアフリカを運営するアラカワアフリカ実行委員会の西尾工作所の現代美術家、西尾美也さんと、アートコーディネーター西尾咲子さんのご夫妻にご対応いただきました。
ARAKAWA102として初めて行った取材ということで、こちらも若干緊張(^^; しながらのインタビューでしたが、快く対応していただきました。
もともとは咲子さんが大学で行っていた地域研究でケニアに行ったことがあり、旅行したのがきっかけで、アフリカにはまってしまったという美也さん。
現地の国立博物館に留学した後、2009年に、西尾工作所ナイロビ支部をナイロビに開設。5月には日本人アーティストがナイロビに滞在しながら現地のアーティストと一緒に制作活動を行うことができる「ナイロビレジデンス」をオープンするなど、アフリカと日本をつなぐ活動を精力的にされています。
現在、美也さんは、文化庁の新進芸術家海外研究制度による2年派遣研修員として拠点をナイロビに置き、世界的に活躍されています(☞ 西尾美也さんの公式ホームページはこちら)。荒川区には知り合いの紹介で住み始めたとのことでした。
– なぜ、アフリカとアラカワなんでしょう?
荒川区に来てみると、意外にアフリカに関係のある人やお店がいろいろあることに気づきました。町屋にはアフリカの布などを専門に売っている「アフリカ屋」(Facebookページ)があるし、タンザニアでリアカーの制作の指導をした職人がいたりします。街中には、意外にアフリカ人が住んでいて見かけます。
それで、自分たちも縁のあるアフリカに関係のある人を荒川区の人に紹介することを通じて、新しいアフリカのイメージを伝えたいということと、自分たちの美術品の展示という側面を兼ねて、アート的なもので何かうまく関連性を見つけ出して結びつけられないだろうか、と思って始めたのが「アラカワ・アフリカ」です。
– 実際に関連性がある部分って、どんなところでしょうか?
例えば、アフリカの人を荒川区に連れてくると、道幅がナイロビの道の道幅と似ている、と言われたことがあります。たしかに、荒川区の道はそれほど広くなくて、ちょうどナイロビの道と同じような幅で、生活感が似ている部分があるんです。
– 今回初めてチラシを見たのですが、いままでも実施されていたのでしょうか?
実は今年で4回目の実施になります。
これまでは展示主体でしたが、今年初めて、ACC(荒川区芸術文化振興財団)の助成を得ることができたので、今回からはギャラリーの外に出始めたんです。
具体的にはサンパール荒川でリヤカーの制作体験を行うなど、子ども達も参加できるようなものも実施しました。
– アフリカの新しいイメージ、について具体的に教えてもらえますか?
アフリカというと、どうしても日本人が持つイメージはステレオタイプなイメージです。アーティストの目線を通してアフリカを見ることによって、違った側面を発見してもらいたいと思っていますし、(道路の例のように)似通った部分もあるんだということを知ってもらいたいです。また、アフリカのアーティスト達にも制作活動に参加してもらうことで自らアフリカのことを伝えてもらえる場を作れればと思っています。
例えば、ナイロビにはキベラというスラム街があります。スラム街なので、自作の掘ったて小屋が並んでいて淀んだ汚い川に面しており、一般的には「汚い」というイメージです。
ですが、それを、今回イベントに参加した田口行弘さんの視点で見ると、「掘ったて小屋は、ゴミになるものをリサイクルして上手に家にした建築物だ。実はカッコイイんじゃないの?」という目線で見ることが出来るんです。
「汚い川に面しているから汚く見えるけど、実は水がきれいな清流だったら、とてもカッコイイんじゃないか?」って。それを実際に、日本とアフリカのアーティストが共同で作品化して、可視化してみています。
– 今後はどのような活動をされていく予定ですか?
今は、これまでの縁の関係でケニアのことを中心に伝えていますし、ナイロビの発信が中心になっています。ケニア以外の国のことや、ケニアの中でも他地域のことを伝えていくことが課題だと思っています。
– 荒川区についてどう思われますか?
商店街もあるし、とても住みやすい町だと思います。最近は、コルシカ商店さんや、フェアトレード品を扱うお店など、いわゆる従来の「商店街」の中に、新しい世代の動きもちらほら出てきているように感じていて興味深いです。
今後、逆に荒川区のことをケニアで紹介するようなこともやっていきたいと思っています。
#会場には、来場者それぞれの荒川区の中にある「心に残るオススメ」を共有するためのマップも設置されていました。
<過去3回のアラカワ・アフリカの軌跡>
・アラカワ・アフリカ(2010.8.26-8.29)
荒川区に拠点を置く西尾工作所と、荒川区でリアカーをつくり、その技術をアフリカに紹介し、アフリカ初のリヤカーの国産化を成功させた株式会社ムラマツ車輌のアフリカでの仕事を通じて、荒川区とアフリカの意外なつながりを紹介。
→ http://atdiary.jp/ogumag/entry/2010/07/20/56646.html
・アラカワ・アフリカ2(2011.6.14-6.19)
荒川区に拠点を置く西尾工作所のアフリカでの仕事と、同じく荒川区に拠点を置き、アフリカの布を紹介している「アフリカ屋」の荒川での仕事を紹介。
→ http://atdiary.jp/ogumag/entry/2011/06/19/56665.html
・アラカワ・アフリカ3(2012.7.24-7.29)
すでにケニアに拠点を置いていた西尾工作所のアフリカでの仕事と、荒川区に拠点を置き、アフリカの楽器ジャンべを制作する工房「TDF」および「アフリカ屋」の荒川での仕事を紹介。
→ http://atdiary.jp/ogumag/entry/2012/07/23/56692.html
「アラカワ・アフリカ4」が開催されたギャラリーOGU MAGについて
ギャラリーコンセプト:
OGU MAGは、写真・絵画など作家性のある芸術作品、織物・陶芸など職人性のある芸術作品、銀細工など地域職人による伝統工芸品の展示や、ワークショップを企画し、地域の中での芸術のありかたを考える交流の場として発展させ「参加者が[ものづくり]に直接ふれられる、体験型の展示をおこなう」ことを目指すギャラリー。
11月のイベント予定:
■二人展 小林 佐和子 × 木嶋 文美
11月2日(土)-11月4日(月・祝) open 13:00-19:00、入場料無料
1983年生まれの同い年。そんな二人が一緒に見てきたもの。別々に見てきたもの。そして、これから見てみたいものを切り取った写真展。
http://atdiary.jp/ogumag/entry/2013/10/27/152428.html
■「長船恒利 眼の眺め」 11月12日(火)-11月24日(日) open 13:00−19:00、入場料無料
「写真の哲学者」長船恒利の回顧展。OGUMAGでは、「写真論写真」の極北ともいうべき写真集「在るもの」に
掲載された写真を一挙に公開。写真において隅々までにいきわたる緊張感は、鑑賞者に一切の感情移入を許さず、その作品が持つ圧倒的な強度のみを提示します。
Gallery RAVENでの展示は、写真集「在るもの」に収録されなかった
沖縄で撮影された〈在るものⅥ〉、および後期の代表作「山境横断」と「traverse」からの作品、晩年の彫刻
作品数点で構成。後期の作品を紹介することで作家・長船恒利の活動の軌跡の全体像を描き出すことを試みます。
http://atdiary.jp/ogumag/entry/2013/10/26/152434.html
公式HP:http://www.menonagame.com/
場所: