ここはカフェ?前例のない作業所「studio753(ナナゴーサン)」日暮里から発進!

西日暮里から、諏訪台中学校、ひぐらし小学校を経て尾竹橋通りまでを結ぶ道、七五三通り。春先には満開の桜が頭上を覆うことでも有名です。
この通りに今年6月、真新しいガラス張りのスペースが誕生しました。

七五三通りに登場

カフェ風だけど、、カフェ?、、それとも保育園?
道ゆく人の???を集めながら出来あがったそこの名前は、「studio753(ナナゴーサン)」。

何やらワークショップをやっている様子

中で行われているワークショップの様子を、一体何をやっているだろう〜と思いながら眺めていると、中から小走りにスタッフの方が出てきてくれました。

 

1. 「自分で考えて仕事をする」。新しいコンセプトの作業所。


「753と書いて、ナナゴーサン、と読みます。就労継続支援B型の作業所です。自分達が働く場所を自分達で作る、をコンセプトにしていて、主に精神系の障害の方を利用者としています。あまり多くは働けないけど、足りないところは補い合って、みんなで集まれれば一人分の労働力になるんじゃないか、っていうコンセプトで仕事をしています。仕事をもらって働くということも一つの考え方ですが、自分で考えて仕事をする、という働き方がしたい人が働く場所です。」

左からスタッフの坂井さん(生活支援員)、森岡さん(施設長)、タニノさん。

studio753では、自分達で仕事を作り出しているため、軽作業や内職などの受託サービスはやっていません。
工賃はその分あまり出せないですが、時給で働くよりも自分達で稼げるようになっていきたい、という方が利用していて、ワークショップのチラシやコーヒーカップのロゴのデザインなども全て自分達で企画してデザインしているとのこと。

「ワークショップは月に1〜2回の実施していく予定です。平日は、飲食物の販売をしている他、自主制作の手芸品の販売をやっていきたいと思っています。そこに付随する広告なども、それが得意な人がやる。
作る人、広告をデザインする人、パッケージングする人。そんな感じでみんなで手探りしながら回していっているところです。」

 

2. 運営は日暮里の精神科「あべクリニック」


それにしてもすごく広く、明るくて立派な施設です。どこが運営しているんでしょう。

広くて明るい施設

「運営母体は、日暮里駅前にある精神科の「あべクリニック」(ホームページ)です。B型作業所を作るという話しは、2015年ぐらいからありました。わたしはクリニックでずっと働いてきていて、その中でこういう場所を作ってみたいなという思いは既にあったんです。そこに、院長が作業所を作ってみようかな、と言ったので「やります!」って手をあげました(笑)。」

院長はおそらく普通の作業所をイメージしていたのではないか、という森岡さん。
こういう場所にしたいんです、ということを伝えたら、最初は中々イメージが伝わらなかったそうです。今ではコンセプトを理解して興味深く見守ってくださっている、と明るく話してくれました。

プロジェクトがスタートしてからは、同僚のクリニック職員である坂井さん、梅津さんと3人で細かいコンセプトを考えて開所までたどり着いたということです。

 





3. かっこいい場所にしたい、から生まれた従来にない斬新な作業所デザイン


従来の作業所のイメージを覆す、斬新なデザインのstudio753。

「私は、障がい者が障がい者たらしめるのは障がい者として扱われるからだと思っていまして、そういうのがあまり好きではないんです。ご本人達が「私は障がい者だから」と言われるのが嫌なんです。そうならないようにするにはどうしたらいいかな、という話しを、ここの開設前に3人で話していました。話し合いの中で、雰囲気が暗いところで作業をしていたらそれは誰でもそういう気持ちになるよね、という話しになり、建築士の方に来ていただいて、ここに通っている人たちが、ここに通っているんだ、と周囲に言えるようなかっこいい場所、をテーマにデザインしていただきました。」

ワークショップの傍らでは作業が行われていました。

こういう場所というのは作業所としては全国でも珍しいのでは。

「うーん、いや、そうなんですかね?(笑) 私ずっと医療にいて、福祉を始めたのが今年の6月からなんで全然わからないんですよ。カッコ悪いんですが(笑)。」

場所を探すところから全て森岡さんたちメンバーで実行。デザインコンセプト含め、すべてオリジナルで立ち上げてきたということですね。前例のない中で絵を描く。すごいことだと思いました。

取材当日は手芸のワークショップが実施されていました。

布でつくる干支飾り、のワークショップが実施されていました。

「講師のタニノルミコさんは職員でもあるんですが、服飾のプロで、スタイリストと舞台衣装制作の仕事をされている方です。妊娠中にたまたまスタジオの外を通りかかってご飯を買いにきていただいた方なんですが、たまたまその時ミシンを使って作業をしていたので、それが目にとまって「何をしてるんですかー」と声をかけてくれたんです。」

この日のテーマは干支飾り作り
スタッフの方も自ら参加して四苦八苦!

ちょうど、元々予定していた手芸の講師候補だった方が来れなくなり、必死に代役になれる方を探していたという森岡さん。
スタジオの業務について話しをしたら「なにか一緒につくりたい」と、すぐ来ていただけることになり、運を感じたそうです。

「建築家の方がこの場所をデザインするときに道路に面する部分を全面ガラス張りにしてくれたのは、地域をとりいれられるように、というコンセプトでやってくださったんですが、それがすごく効いている感があって、実際に地域の方が「なにしてるんですか~」って来てくださることが多いのが、すごく良かったなと思ってます。」

 

4. 運営する中で、利用者との関係性の変化を実感


森岡さんはあべクリニックの職員として新卒で入り、16年を勤務。他のスタッフも大半がクリニックの職員で、ほとんどが精神保健福祉士(PSW)の資格を持っています。

スタッフのみなさんは和気あいあい

studio753をオープンするにあたって、あらためて福祉の勉強はし直したといいます。

「まだ始まったばかりですが、自分個人としてはやりたいことがやれていて充実しています。ですが、ここから先はメンバーで少しでも稼いでいくようになりたいなと思います。」

普段はコーヒーなどの食事を販売

こちらに来られる利用者の方は、もともとクリニックで運営するデイケアの利用者の方を中心に来ていただいているといいます。
オープン後は、保健所や福祉の相談支援センター経由の紹介、あるいは個人でクチコミで来られる方もいるとのこと。
運営を開始してみると、もともと患者だった利用者の方々との関係性も変わってきたそうです。

「病院にいるとどうしても職員と患者さんという関係性でしたが、こちらに移ってきて、引き続き私たちが職員でみなさんは利用者の方々、という関係になりました。ですが、職員だから私たちが何もかも決めて、ということは一切しませんので、同じ立場で提案したり、アドバイスをしたりするんです。」

「そうなってみると、結構長い付き合いの方もいらっしゃるのに、あ、この人はこういう考え方だとか見方をする人なんだ、というようなところ、知らなかった一面がいっぱい見えてきて、そういう意味ではすごく楽しいです。病院との違いを感じています。」

 

5. 今後の展開について


「飲食についてはいずれ移動販売など外に出ていきたいと思っています。ただマンパワーもかかるのでそれ次第かなと思っています。手芸品についてはタニノさんが入っていただいたのもあり、目指すところとしては洋服までいきたいんですが、大分先かなと思ってます。」

「うちは精神科ですが、精神疾患の方が描く絵が結構面白かったりもするので、それを何か活かしたことなんかもやれたら、、とか。いろんなことをやって失敗も繰り返しながらになると思いますが、いずれにしても、障がい者の作業所だから作りましたので、というようなものはやらないです。それ以外のことであれば何でもやってみたいと思っています。」

日暮里から生まれた、長年精神科で勤めてきたスタッフの方の思いが込められた、新しいコンセプトの作業所。

場所の活用についてはいろいろな方の意見やアイデアも欲しい、ということですので、気になったらぜひ声を掛けてみてください。
ガラス張りですから、外に立っていればすぐスタッフの方が飛んできてくれると思いますよ。

今後のイベント日程については、studio753のサイトをご確認ください。


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