荒川の職人さん:6人目「畠山七宝製作所 畠山弘さん」

今秋、南千住から歴史と伝統を現代に発信する新たなプロジェクトが公開された。南千住で七宝焼きを作り続ける畠山七宝製作所(代表:畠山弘さん)とNPO法人千住すみだ川(代表:海老江重光さん)、そして日本物怪観光(代表:天野行雄さん)による「妖怪七宝」がそれだ。

完成した妖怪七宝は全5種類、2バージョン

海老江さんは生まれも育ちも南千住、コツ通り商店街の理髪店の3代目。畠山さんは、海老江さんの店の常連客の一人であった。年々街から活気が失われていく様子は二人の共通する憂い事であり、「何かできないか」と顔を合わせるたび話していたという。

行動に移すべく、海老江さんは「NPO法人千住すみだ川」を立ち上げ、数々のプロジェクトを展開。近隣の小学校と連携し、地域学習の一環として「南千住検定」を開催すると、受検者の枠は瞬く間に埋まる盛況ぶりを見せた。畠山さんも、合格者に贈られるマイスターバッジを七宝で制作するなどして企画を支えた。

海老江さん(左)と畠山さん(右)

「妖怪七宝」プロジェクトの話が浮上したのは今年の5月頃のこと。千住すみだ川では以前から「隅田川妖怪絵巻」と題してワークショップを開催していたが、昨今の妖怪ブームの後押しもあり、妖怪造形作家である天野さん(日本物怪観光)の協力を仰いで地元の伝統工芸である七宝焼きの形で世に送り出すこととなった。

様々なプロダクトのデザインを手掛ける天野さんだが、伝統工芸である七宝のデザインという点に抵抗はなかったのだろうか。

「難しいですが面白かったですよ。河童といえば大抵の人が同じ格好を思い浮かべるように、妖怪は昔から姿形がある程度決まっているんです。だからこそ表現するのが面白い。デザインという仕事も、その物や場面に合わせて最適解を考える。制約の中で工夫する、制約で遊ぶことが妖怪とデザインに共通する面白さかもしれません」

天野さん

天野さんの提案もあって店舗販売第1号は神保町の美術古書店、大屋書房に決まった。絵巻や浮世絵、妖怪に関する古文書の総本山ともいえる同店で「妖怪七宝」を販売できることは大きい。今後も東急ハンズ東京店などでの販売が予定されているが、彼らはそこに留まるつもりはない。

「歌舞伎劇場の売店って結構購買があるんですって。歌舞伎が好きな人なら気に入ってもらえるんじゃないかな。今度話をしてきますよ」と海老江さんが言えば、「この間試作品を呉服屋さんに見せたら、『これで帯留めを作ってほしい』だって。金具はあるから作ってみようと思うんだ」と畠山さんも意欲的に返す。世代は異なるが、熱量は変わらない。

制作途中の妖怪七宝

「妖怪七宝」はピンズ、根付ともに1個3000円。大量生産のできない丁寧な仕事が求められる七宝焼きでこの価格はあまりにも破格である。「あんまり高いと買う気しないでしょ。でもね、これ3000円以上の価値は十分あるよ」と畠山さんは胸を張る。東京都伝統工芸士の認定を受けている畠山さんの腕は確かだ。

天野さんが、この街からキャッチーでユーモラスな妖怪たちを現代に呼び起こす。畠山さんが、この街に根付く技術で美しい工芸品に仕立て上げる。海老江さんが、この街への情熱をもって世に送り出す。三人の起こしたアクションが今、南千住に再び活気を取り戻す火種に変わろうとしている。

畠山七宝製作所にて

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