下町企業訪問記#3 – 製本一筋70年。培った技術と経験から生まれた「最高のノート」で勝負!渡邉製本

東日暮里に、製本一筋に70年。熟練の手作業を武器に、大手にはできない独自の価値でマーケットに挑戦し続ける製本屋があります。

その会社、渡邉製本は、戦後間もなくの昭和21年に、当時製本業者が少なく困っていた出版社からの出資を受け、台東区で創業しました。

昭和63年に現在の地に移転しておよそ30年。
2016年には自社企画製品である、製本屋のこだわり高級ノート「BOOKNOTE」の販売を開始した会社を訪ねてきました。

 

1. 「自分で作ることが好き。」3代目社長渡邉浩一さん


社長の渡邉浩一さんは3代目。奥さんとご結婚されて入社されました。

渡邉社長

「大学では製本について学んでいたわけではないです。入社した後に、一年半ほど同業者の会社で修行させてもらいました。ただ、本は好きなので本は良く読みます。」

工場内

「手仕事や技術についてはこの会社に入ってから職人さんに教えてもらったりして学びましたが、やっぱり好きだったみたいですね。嫌いだったら覚えないで事務仕事だけやっていればいいんでしょうが、自分で作るのが好きなもので。ですので、色々な試作品を作るんですが、それは全て自分で管理しています。設計だけでなく、製作もします。」

素人な質問にも丁寧に答えていただきました。

「例えばこういうノートを作ってほしい、という依頼があると、まずは束見本というものを作ります。束というのは厚みという意味ですから、厚みの見本ということになるのですが、その後、実際の出来上がりに近いダミーを作ります。ダミーについてはやはりお客さんに実際に手に取って見てもらうものになりますので、自分でやらないと不安ですし、後でクレームが来たり設計図が間違っていたりした場合に自分がやったものであれば自分で責任を取れますので。」

お話しを聞いていると、作るものに対して妥協せず、お客さんに対して真摯に向き合う信念が窺えます。

 

2. 長年培った手仕事の技術と製本への想いから「BOOK NOTE」が誕生


渡邉製本の主業は創業時から続く本の委託加工。
主に、加工した表紙がつく「上製本」と呼ばれる本を主体とした製本サービスを提供されてきました。

工場には古くからの様々な機械も。こちらはプレス機。

「私たちは上製本をやっている会社としてはそれほど大きくない会社ですから、大規模な会社さんに対して、製本のスピードや値段などでは競争することが出来ません。ですから、そこではないニッチな分野を狙って仕掛けていくようにしています。機械で出来ないような部分を狙っていくことになります。ですので、うちは職人さんへのトレーニングなども、普段機械でやっていることを、手作業でできるようなトレーニングは以前からやっています。」

培った技術で自社製品を手がけられないかということは以前から温めていたといいます。

「大手が出来ない手加工の技術とノウハウを活かした商品企画への想いは以前からありました。BOOKNOTEの企画は2015年の夏に始まり、最初は私と家内と娘、それにデザイナー2名で始めたんですが、途中で行き詰まりました。海外に輸出している委託商品があるんですが、それに似たものになっていたんです。」

行き詰った渡邉さん、企画を全てゼロからやり直したそうです。

ゼロからやり直した、と語る渡邉さん。

「専門家を入れよう、ということになりまして、商工会議所の専門家の派遣制度を活用して毎月話し合いを繰り返しました。最初の案は全部捨てて、自分達がどういったものを作りたくて、どういう人に買ってもらいたいのか、そこから議論し直しました。どういうシーン、シチュエーションで使ってもらいたいか、ということを色々考えていく中で、様々な素材を試行錯誤しました。2016年10月に漸くまとまりまして、形になりました。」

製本屋の「欲しい」と「使いたい」が詰め込まれた、こだわりのノート「BOOK NOTE」。
商品紹介サイトには製品に込められた「8つのこだわり」や「使い方ギャラリー」がアップされています。オンラインでの購入が可能です。

画像をクリックするとBOOK NOTE 販売サイトに飛びます。

ほどよい柔軟性と固さを合わせもった表紙や、中の紙についても、目への優しさ、書きやすさなどを追求して素材を何度も試したり、方眼の線の色も、試し刷りをやりながら何度も変更したと言います。販売してみると、元々の想定とは異なる反応もあったようです。

「少し年齢層が高めの男性のビジネスマン、という顧客ターゲット設定を行って商品を設計しましたが、オンラインで買っていただいている方を見ますと、購入されているお客様は思っていたより女性の方が多いんです(笑)。ですので、最初は黒のBOOK NOTEが一番売れると思っていたんですが、蓋を開けてみると、黒が一番売れてないんですね。。(苦笑)。」

こだわり抜いて作った商品。社長の説明にも熱が入ります。

BOOK NOTEの商品ラインナップにも、想定利用シーンに基づいたこだわりがあります。

「現在、ノートは方眼と無地のもののみとなっています。横罫のものはないんです。というのは、自由な角度で使ってもらったり、タブレットPCの画面のようなイメージでアイデア出しなどに使ってもらいたいということがあります。」

紹介サイトにはユーザーの方の自由な利用例も!

ノートをもっと自由に、利用者の思いのままに使ってもらえるもの、を追求したBOOK NOTE。
ペタッと置いて使えて、見開き1ページでも使える、という特徴の潜在性を存分に活かしてもらえるような設計になっています。

「女性のグラフィックデザイナーで使っていただいている方がいらっしゃいますが、その方も見開きで本当に自由に使っていただいています。また、色々なものを貼り付けたり、アイデア出しにあたって、見開き1ページでマインドマップを作成していただいたりだとか。大きさについても、女性にも持ちやすい大きさ、ということで、当初はA5サイズのものも考えましたが、これだとちょっと女性のバッグには入りづらいなということで、ワンサイズ小さいものに落ち着きました。」

実は1ページ目が表紙と一体化しているBOOK NOTE。1ページ目から見開きで使えるように、という工夫です。サイズも自分の使いやすいサイズにカットしてもらえます。製本屋自らが作った自社製品だからこそのサービスですね。

渡邉製本 BOOK NOTE
色合いもかわいいBOOK NOTE(モノづくり市での展示より)

 

3. BOOK NOTEに続く次の展開にも既に着手


「BOOK NOTEについては、もう少し大きなサイズのものを作ってもいいかなとは思っています。ワンサイズ大きなものが欲しいという方がいらっしゃるんです。英語版では同じような体裁のものは作っていますし、技術的な問題はないです。」

渡邉製本では、新商品「NUTTA(ぬった)」も仕込み中です。

「この前のモノづくり市でデビューさせました。」

まだ出来たてほやほや、新製品「NUTTA」

「細かな製品コンセプトや利用シーンについてはこれから考えていくのですが、オトナ女子、ということで考えたものになります。うちの技術を活かした部分はここの色になります。これ、普通の製本屋さんは塗りたがらないんです。というより、出来ないんです。刷毛が使えないと出来ないんです。つまり手作業なんです。」

紙の縁の色が特徴。一つ一つ手作業で色塗りされています。

モノづくり市ではこれを一冊3000円で売りました。
見込みとしては女性向けということでピンクが一番売れると思っていたのですが、蓋を開けてみたらターコイズのものが男性ばかり10冊売れました。
足りなくなって慌てて会社に補充しに戻ったぐらいです(笑)。驚きました。

買っていただいた若いお父さんの声を聞いたら、このノートは長く持つから、子供に表紙に絵を描かせて、子供の成長記、スクラップブックとして使いたい、と仰っていました。表紙が白いので自由に使っていただけるんですね。女性向けということで表紙を白にしたんですけどね、、(笑)。
表面加工してあるので、油性マジックで書いても染みないし消えないんです。

 

4. 自ら情報発信し、日本全国・海外とも取引を拡大


「私どもはホームページを開設したのですが、どの機械が何台あって一日にどれだけ印刷できる、といったような宣伝は一切行わず、どういう商品ができる、ということをメインにし、問い合わせフォームも、入力していただくとそのまま見積もりが作成できる見積依頼フォームにしました。そのため、毎朝全国から見積依頼が来ています。」

ホームページ以外にもFacebookやInstagramなどを通じた情報発信にも注力している渡邉製本さん。

「会社の情報や、BOOKNOTEのような商品情報を色々な方面に発信して、コンタクトしてもらえるように心がけています。BOOKNOTEのようなものがあると、それが、渡邉製本の技術や考えの宣伝にもなります。」

ホームページも自ら更新。アクセスデータを解析して日々改善しています。

ホームページでの問い合わせを通じて、アメリカへの日本製の紙を使ったノート輸出に成功するなど、ITを駆使して日本全国~世界でもビジネスに挑戦し、常に新しい仕掛けをうっている渡邉製本さん。
BOOKNOTEに続く新製品にも期待ですね!


<企業情報>

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