サブオタ女子、見参 ~その3~ 小劇場『d-倉庫』

日暮里駅のバス通りを抜け、日暮里繊維街の方ではなく、住宅地が密集している東日暮里地区を歩いて5分強。

ふと視線をあげると下町の風情が色濃く残る路地の中に突如緑と白、赤の鮮やかな『d-倉庫』なる看板が出現します。あれ、こんな住宅地の真ん中に倉庫なんてあったっけ?

看板の色もですが、書体もお洒落で可愛い。

看板から視線を横に移すと、駐車場の向こうに2階建ての何やら大きな建物を発見しました。1階部分には青い大きな扉が、そして2階部分にはテラスのようなものと、先程見つけた看板よりも2倍以上大きなサイズの『d-倉庫』と銘打たれた看板が目に飛び込んできます。

これは・・・「倉庫」なのか? それにしては作業着を着ていない人たちが出入りしている気がするぞ? でも「倉庫」というからには何かを保管している所なのだろうか・・・?

さて、今回は住宅地の真ん中にある建物『d-倉庫』さんについて、ここにお勤めの林慶一さんにお話を伺いました!

 

– 『d-倉庫』さんってどんな物を保管している倉庫ですか?

実は『d-倉庫』は「倉庫」ではなく「小劇場」なんです!とは言え、元々はここも小劇場ではなく、倉庫として使われていましたが、オーナーの真壁が建物を丸ごと借りてリフォームし、2008年12月に劇場としてオープンしました。それ以降、劇団の方々や、ダンス、パフォーマンスをされる方々に「小劇場」として利用されています。

 

– なるほど、ここは「倉庫」とは名がついているものの、「小劇場」だったんですね! 『d-倉庫』さんは2階建てのようですが、1階と2階はそれぞれどのように利用されているのでしょうか?

1階には4.7mもの高さがある天井の舞台スペースがあり、客席も100人前後の方々が座れる広さがあります。 実は1階の舞台のキャパシティは一般的な小劇場に比べて大きく、広々した印象を受ける、とよくお褒めの言葉を頂きます。

二階には、ロビーと待合のカフェスペース、楽屋があります。

なお、待合のカフェスペースはフリースペースなので、どんな人でも利用することが可能ですし、たまに興味をもった方が覗きにきて、公演のチラシを持って帰ることもありますよ。 ちなみに二階の奥に階段があって一階の舞台・客席スペースに行くことができます。

 

– 大分大きな建物だと思っていましたが、中は想像以上の広さですね! そもそもどうして日暮里に『d-倉庫』さんをオープンしようと思われたのでしょうか?

実は『d-倉庫』のオーナーである真壁は、OM-2(旧・黄色舞伎團2)という劇団を旗揚げしています。

その劇団は、前衛的で実験的な舞台を行うため、なかなか劇場を貸して貰えなかったそうです。だから自分達の公演が出来る劇場を造ろうと思い立ち、神楽坂に『die pratze(ディ・プラッツ)』という小劇場を造りました。 そして、神楽坂以外でも山手線圏内の動きやすい場所で、下町の雰囲気が残るあまり都市的でない土地にて劇団の人たちが公演できる場所を造ろう、ということで、日暮里に『d-倉庫』ができました。

※die pratzeは元々田端にあり、その後は神楽坂に移転し、麻布にもう一軒の小劇場を開いたそうです。マイナージャンルのパフォーマンスや舞台芸術を行っている方々への認知度が高かったものの、残念ながら2012年7月に閉館されてしまったそうです。

 

– 『d-倉庫』さんは小劇場としてどんな特徴がありますか?

安い値段で広い公演スペース、綺麗で広い楽屋、良い設備が借りられる、という点が一番の特徴ですね。

『d-倉庫』は “劇団の方に、安く劇場を使用して欲しい!” という思いで運営しています。劇団を運営するにあたり、お金の問題はどうしても浮上してきますからね・・・。 だからできるだけ安く借りられるような値段設定をしています。 でも値段が安いからと言って、ボロボロの設備では気持ちよく使用することができません。なので、ロビーを始めとし、楽屋や舞台を綺麗にして、できるだけどの方にも施設を使いやすいようにしています。

なお、『d-倉庫』はスペースを貸すにあたって相手を選ぶことはしません。どんな劇団・ダンス・パフォーマンスの方々にも均等に使用して欲しいと考えているので、ここでは審査は一切しないんです。 『d-倉庫』が主催で行っている企画やフェスティバルなどは「実験的なものを良し」としています。だから前衛的且つ実験的な舞台ができる人達の集まる場になればいいな、と考えています。

そう言えば、利用者の方々からはロビーが評判ですよ。 実は、小劇場にはここのようにこんなに広いロビーがある所はほとんどありません。だから初めて『d-倉庫』に訪れる方は必ずびっくりされます。 ロビー以外にも「住宅地にこんな劇場があるなんて知らなかった!」と言って驚かれる方も多く、立地的な面からも楽しんで貰えるのも特徴かな、と思っています。

広くてとても綺麗なロビーでした。

 

– 「企画」と言えば、『d-倉庫』さんのHPを拝見すると、過去に様々な企画が行われているようですが、これは誰が企画立案をしているのですか?

HPに掲載されている『ダンスがみたい!』『ダンスがみたい!新人シリーズ』『M.S.A.COLLECTION』などの企画は、『d-倉庫』内の実行委員会メンバーが中心となり、批評家など色々な方に協力して貰いながら運営しています。 実は、元々これらの企画は『die pratze』があった頃からずっと行われているものなんです。

当時、そこまで認知度が高くなかったマイナージャンルの舞台芸術を多くの人に認知して貰い、またその舞台芸術に携わっている人達を応援するために企画されたのが始まりです。これらの企画の中で、例えば『ダンスが見たい!』はもう16回も行われています。この企画は、舞踏家やマイナージャンルと言われているコンテンポラリーダンスをしている方々には認知度が高く、またこの手のジャンルのダンスを観るのが好きな観客の方々にとっても非常に馴染みのある企画となっています。

最近立ち上がった企画となると『現代劇作家シリーズ』が挙げられます。これは、著名な劇作家の作品を1本採り上げて、その戯曲だけを連続で上演するという企画です。 来年の4月下旬から5月中旬にかけて5回目の公演を予定していますが、これから徐々に認知度を上げていこうとしていますよ。

 

– 日暮里の住宅地の真ん中にこんな面白い企画をしている小劇場があったなんて・・・! あの、林さんは日暮里ってどんな町だと思いますか?

舎人ライナーができる前後で大分印象が変わったな、と思います。 舎人ライナーができる以前は、もっと下町の雰囲気がありましたが、今それが変化していっていますね。 でも町の景観などを見るとまだ発展途中に見えるので、今後どう発展していくかが楽しみです。

 

– 最後に『d-倉庫』さんの今後の展望や目標を教えて下さい。

正直なところ、規模を大きくしたいとは考えていません。 ある程度の大きさで使いやすく、大きい劇団だけではなく小さい劇団の方々にも使って貰いたいです。 また、それらの劇団の方々以外の利用者の開拓もできたらいいなと考えています。

『d-倉庫』の一番の利用者は劇団の方々です。もちろんこの方々にも利用して貰いながら、今後は美術の展示や映画の上映など、たくさんの人達に利用して貰いたいですね。 そして、多様な芸術ジャンルが交流する場として、お客さん達が「あそこにいけば色々な”芸術”が見られる」という場となっていきたいと思っています。

 

林さん、本日はお忙しい中、本当に有難うございました!

『d-倉庫』さんで行われる企画など、詳しくはホームページをご覧下さい。

ちなみに一階の外にある駐車場は別の持ち主のものなので、お客さんは車を置くことができません。『d-倉庫』さんにお越しの際はご注意下さい。


<日暮里 d-倉庫>

※荒川102の取材情報は地図からも探せます。ぜひご活用ください。>>> 「荒川102取材マップ」


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