生の空気の振動を感じてもらいたい – 落語家 三代目 桂やまと(後編)

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顔がむくむほどの葛藤を経て「タイミング」を学ぶ


真打になれば話は別ですが、それまでは師匠の持ち物なので、どう見ても白いものであっても、師匠が黒いと言えば黒と言わなければならない。
つまり自分を押し殺さないといけないんです。自分を出す場所というのはわきまえないといけないんです。

「いつでも自分を出していこう」という今の世の中の風潮とは違う環境で、その場その時の空気や場を読む力というものを修行の中で我々は教え込まれるんです。

例えば、師匠が黒いと言ったものであっても、実は師匠自身がどこかで「あれ、やっぱり白だったかもな、、」と思っているかもしれない。そうすると、我々もタイミングを見て「師匠、やっぱりあれ、白、、っぽいんですよね。。」なんて言ったり。そういうことが出来るタイミングというものを見定める力をつけていきます。

人はタイミングで動く生き物なので、師匠とのやり取りを通じて、そういう人の行動について学ばせてもらいます。

とはいえ、葛藤はめちゃくちゃありましたね。顔がむくんで、眼鏡が食い込んでしまうほど(笑)。
時間もめちゃくちゃで、師匠が来いと言えばすぐに行かなければいけない。時間外、という考え方は無いんですね。

その辺りは一般社会とはまるっきり違いますね。前座までは文字通り一日も休みはありませんが、そこに食いついて何とかやっていきます。

 

いつまでも新しいのが落語。生の空気の振動を感じてもらいたい。


落語と他のお笑いの違いは、私達はぶったり叩いたりはしないんですよね。
人のことを否定したり、そういうところで笑いを取るということもしません。

私達は、ストーリーの中にみなさんに入り込んでいただく、そのための話術というものを磨くのであって、笑いはあくまでも平和で和やかな笑いです。
だからこそ、年をとっても若い人でも、そういう笑いを求める方の集まりになってもらえればな、って思ってます。

落語は口伝で、一席一席を習いたい師匠から教わります。そして、覚えたらその師匠に聞いてもらう。合格点が出ると、お客さんの前でやっていい。こういう、稽古の流れがある。そうやって財産を共有させてもらうわけです。

でも、不思議なもので、こうしてOKが出たものについては、私達はどう変えてもいいんです。
自分の間(ま)にしていいし、自分の言葉にしていい。そこが、落語がいつまでも新しい理由だと思うんです。

誰が聞いてもおんなじセリフだったら、お客さんも飽きちゃうと思うんです。でも、そうじゃない。そこが、可能性をいっぱい秘めている芸能なんだと思います。

その辺りを、若い方達にも実際に生で聞いて、生の空気の「ポーン!」という振動を感じていただいて、そういう辺りも汲み取ってもらえればな、と思ってます。

話が進むと共に演者も会場もどんどん一体化

 

200席をネタに持ち、ガンガン変えていきたい。


初演のネタは、習ったときのものを元に自分の解釈ややり方を作っていくものですが、迷ったときは、私は家内に相談します。

「ここまではこう考えてるんだけど、ここから先がどうも作れねぇんだよなぁ」なんて相談すると、家内が「じゃあ、こうしたらいいんじゃない?」なんて言ってくれるんです。

彼女は元々出版社で勤めていたのを辞めて私のマネージャーになったので、いろいろ自分とは違う視点を持っているんです。

そういう力を借りつつ、やっぱり演じるのは最終的に自分なので、自分の言葉で、皆さんに聞き入ってもらえるように、そんなことを考えながら作り上げていきます。

撮影:武藤奈緒美

古典落語の初演は独演会でできるだけ1席はするというのをライフワークにしています。
年間約10席をやる計算ですが、10年間で100席になります。50歳になると、それまでに持っていたネタ数と合わせて200席になる予定なんです。

その200席を全部練り直して還暦になったとき、桂やまとがどうなっているか、っていう人生設計を立てていまして、今はその真っ最中なんです。
まずはネタを増やして、その後はガンガン変えていってやろうって(笑)。

 

公演情報はホームページにて


荒川区で生まれ育ち、荒川を愛してやまないというやまとさん。
あたらしい家やマンションができても、小さいころからの町の気質がいまもさほど変わらずに残っているのが荒川区のいいところだと言う。

「中に住んでいるとそれほど感じないかもしれませんが、他所から見ると、とっても人間らしい生き方をしていると思うんです。人と人とが普通に話をする、これが当たり前なのが荒川区のいいところかなと。他の区からすると良くこんなに挨拶をするな、ってところ、あると思うんです。」

その体験や思いが、高座にも生かされている気がした。
寄席や独演会の情報は桂やまとの公式ホームページに記載されています。
たまには、ぶらりと気軽に、笑いを楽しみに行くのもいいですよ。

桂やまとオフィシャルホームページ(http://yamato3rd.com/

 


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